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詩No.122「生まれ変わったら」
生まれ変わったら
また僕に生まれて
あの日「もう帰らなきゃ」と引き返した
知らない町の小道を
更に奥へと彷徨いたい
生まれ変わったら
また僕に生まれて
昨日食べたご飯の味を
もっと美味しいと思いたい
生まれ変わったら
また僕に生まれて
今日までを生きた自分に
ありがとうと言いたい
生まれ変わったら
また僕に生まれて
そうやって生きていきたい
そんな僕に生まれた僕へ
ありがとう
青と黒とが入り混じる
理由もなく沸いてくる感情が
ノンカフェインに挿したストローの
奥で詰まるから
吐き出したことは吸い戻せなくて
僕はまた酸欠になっていく
【白の手帖】5頁「息」
1度も11月のカレンダーを捲ることなく
10月だった僕は12月になった。
世界を観た。狭い。
そして広い。
なにもしない時間だって間違いなく生きていて、
本当になにもしていないことなんて、
本当は無い。
眠っていても心臓は動いているし、夢だって見る。
一昨日は、初めて自分が死ぬ夢を見た。
いつも顔を合わせている職場の人に気付かれず、
なぜか苦手な人が僕の死を喜んでいて、
憎しみは死んだ後
詩No.120「鮮やかに死んだあの日の景色を」
涙なんか出ないよ
日照りで枯れた草ばかり踏んだ道
なんにもない
なんにもないよ
悲しくなんて
笑えなんてしないよ
いつから変わっちゃったんだろう
とか思っていることは変わってないし
なんでもない
なんでもないよ
悲しくなんてないんだけど
あの日確かに死んだ景色の中で
僕たちは生きていて
鮮やかに映したのは
切り取った一瞬を積み重ねる瞳だけだった
僕
僕ひとり
僕たちは生きていて
僕たちは死ん
詩No.117「まだ雨が降っていてほしいと思うこんなときは」
君がいないと
なにもできない
僕は僕だ
なにもできない
心晴れたんだろう
いいじゃないか
それでも消えないんだ
僕はまだ
なにもできない
どうしても
しゃがみこんでしまうようなとき
君と君の
周りの世界で
僕はやがて満たされる
けれど
まだ雨が降っていてほしいと思うときは
大丈夫になりたくないんだ
君がいないと
なにもできない
君が支えでいてほしい
だから
僕はまだ
なに
詩No.115「暮れ」
僕のスクリーンに
芒は後ろめたく映った
よろよろと覚束無い
締まりの悪い娯楽と同じね
そのひとつ撫でつけたって
なんの償いにもならないのに
あなた、あなたは今
何をしているのでしょうか。
なんでもなくていい。
ただその顔が観たいのです。
ただその声を、頼もしく僕の前で生きる姿を
有り難く観たいのです。
やがて姿なき風は
僕と芒を追いこして遥かへ
「いつかなくなってしまうもの」
それだけで