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シティポップの帝王KIYOSHI YAMAKAWAシリーズ

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KIYOSHI YAMAKAWAものを集めました。シティポップの帝王ともキングとも言われるKIYOSHI YAMAKAWA。その魅力はどこにあるのでしょうか。シティポップファンは… もっと読む
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あなたにリスペクト

あなたにリスペクト

 かつて山川潔というシンガーがいた。70年代中頃から80年代初頭にかけて活動していたその男は、当時の日本では珍しい本格的なソウルシンガーだった。彼のソウルフルな歌唱とその音楽は決して一般受けはしなかったが、感度の高い一部のリスナーに絶大な支持を受けていた。しかしあくまで売り上げを重視するレコード会社は彼のソウルをまるで理解せず、彼の制作していた新作アルバムを、当時流行っていたシティポップ風にアレン

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ひとちがい

ひとちがい

 三連休の大阪。ここはなんば駅の高島屋前。緊張で震えながらアコースティックギターを手に歌う私。歌うのはおじさんたちが好きなフォークソングばかり。名残り雪とか長い夜とか結婚しようとか。まず昔懐かしの曲で人目を引いてから自作の曲を歌ってる。

 だけど今日は初めての関西ライブ。貯金叩いてやっと来たんだからまだまだ人目を引かなきゃ。で、自分の曲の前に選んだのがKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェ

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深夜のシティポップ

深夜のシティポップ

 バーの壁に浮かぶ二つのシルエット。カウンターの真上のライトに淡く照らし出された二人。僕らはまるでホッパーの絵の登場人物のようだ。密会。情事。甘い蜜。自動筆記のタイプライターが二人の秘密を暴き出す。

「今夜は絶対君とこの店に来たかったのさ」

 僕は隣の彼女の耳元で囁く。ティファニーのネックレスが触れそうなほどの距離。だけどここじゃメインディッシュは食べられないぜ。

「確かにいい雰囲気のバーじ

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世界はシティポップに夢中

世界はシティポップに夢中

 改めてここに書く必要はないが今世界中の人々がシティポップに夢中になっている。なぜ世界の人々が三十年以上前に流行ったシティポップを絶賛しているのについての分析は専門家に任せて、三文ライターの私はここでシティポップに関するちょっとしたエピソードを紹介することにしよう。

 冒頭にも書いたように世界は今シティポップに夢中になっている。それは竹内まりやの『プラスティック・ラブ』がYouTubeで注目され

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空港で知らない女とシティポップについて語った

空港で知らない女とシティポップについて語った

 夜の空港の椅子でウトウトしてたら突然知らない女が声をかけてきた。僕はハッと目を覚まして何事かと女の方を向いたが、女はその僕に向かって僕のとこから音が漏れていると注意してきた。

 僕はすぐに手で耳を触ってBluetoothのイヤホンがあるか確かめたが、なんと両方外れていた。僕は慌てて周りを見たが、イヤホンは二つとも椅子に落ちていた。

 落ちているイヤホンからは僕の好きな偉大なるシティポップレジ

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シティポップと天かす生姜醤油全部入りうどんの物語

シティポップと天かす生姜醤油全部入りうどんの物語

 シティポップに天かす生姜醤油全部入りうどん。全くミシンと蝙蝠傘の出会いのよりもよほどシュールレアリスティックなナンセンスだ。

 僕は今最高のシティポップであるKIYOSHI YAMAKAWAを聴きながら海沿いの道を走っている。隣には最高の彼女。うどんの麺のようなもちもちとした肌をしたキュートな君を乗せている。

 ずっと一人だった僕。その僕の前に現れた君。二人の行先はこのオンボロなアメ車のみ知

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今夜、シティポップが流れるバーで

今夜、シティポップが流れるバーで

 大学時代の友人から久しぶりに電話がきた。僕はずいぶん音沙汰のなかった奴からの電話だったのでなんだろうと思いながら電話に出た。我々のような人生の半ばを過ぎたものには、このようにしばらく会っていなかった友からの電話がたびたびあり、それは決まってどこぞのアイツが死んだから葬式に出ないかという誘いだ。だから僕もそんな電話を覚悟して声を低くして友人になんだと尋ねた。しかし友人は明るい調子で僕に元気かと逆に

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行方不明のあの人

行方不明のあの人

 シティポップ歌手KIYOSHI YAMAKAWAはまだ行方不明だった。こんなに探しもいないんじゃもう死んでるんじゃないかと流石にみんな思い始めていた。KIYOSHI YAMAKAWAを最初に発見した音楽ファン。それからDJ OSUGIのような同業者。そしてKIYOSHI YAMAKAWAの音楽の普及に多大な貢献をした音楽ライターの上曽根愛子。もうKIYOSHI YAMAKAWAを探すのは諦めよう

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引退コンサート

引退コンサート

プロローグ
 中部地方の某県にある有名オーケストラの団員たちは近々行われるリハーサルを行っていた。このオーケストラは全国でも知られているオーケストラで、毎年の大晦日には有名な指揮者を迎えて市のコンサートホールでベートーヴェンの『第九』を演奏していた。今回の公演は通常のプログラムの小規模な公演だが、団員にとってはこの公演は特別の思いのあるものだった。

 オーケストラの団員の中に松沢さんという人がい

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シティポップな風に抱かれて

シティポップな風に抱かれて

 季節はすでに秋

 サーファーたちはサーフボードを抱えて

 どこかに消え去った

 だけど僕はまだ夏にいる

 君と過ごしたこの砂浜で

 今も君を待ってるんだ

 太陽が燦々と輝く中で歌ったあの歌が

 今も僕の中で鳴っているんだ

 君も好きだったあの歌

 あのKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』

 今、秋の砂浜から君のために送るよ

『ああ~♫ アヴァンチュ

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私の三曲:シティポップ編

私の三曲:シティポップ編

DJ:はい、あなたのためにステキな音楽をセレクトする『ナイトミュージック』の時間です。今回はゲストに音楽ライターの上曽根愛子さんを迎えて一緒にシティポップからセレクトした三曲を語っていきたいと思います。では上曽根さんよろしくお願いします。

上曽根:音楽ライターの上曽根愛子です。こちらこそよろしくお願いします。まずいきなりぶっちゃけますけど、私なんかがシティポップを語っていいんですか?私がシティポ

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SOUL TWO SOUL まとめ版

SOUL TWO SOUL まとめ版

連載していたSOUL TWO SOULをまとめました。

KIYOSHI YAMAKAWA KIYOSHI YAMAKAWAの再評価ブームはまだ続いていた。いや、ブームではなくもはや山下達郎や角松敏生のようなシティポップの定番となりつつあった。雑誌のシティポップ特集には彼の『アドヴェンチャー・ナイト』は必ず1ページを割いて紹介され、そこにライターや同業のミュージシャンの熱い文章が寄せられた。しかし

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ソウル恋物語

ソウル恋物語

 上曽根愛子のSOUL TWO SOULの記事の続編です。今回上曽根愛子さんはKIYOSHI YAMAKAWAを求めてはるばる韓国のソウルに行きます。そこでとうとうKIYOSHI YAMAKAWAと出会うのですが、しかし韓国で音楽プロディーサーとして成功しているはずのKIYOSHI YAMAKAWAは何故かすっかり落ちぶれてホームレスになっていました。

ソウル恋物語プロローグ
 先日亡くなった人

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夜の誘惑者

夜の誘惑者

 夜の誘惑者になれる男なんて限られている。大半の男はそんなを夢を見て一生を過ごすだけだ。そんな夢のBGMには当然KIYOSHI YAMAKAWAは欠かせない。このシティポップ最大の天才の音楽こそ我々哀れな男たちの癒やしになってくれるのだ。KIYOSHI YAMAKAWAの代表曲に『アドベンチャー・ナイト』という曲がある。もうあえてここで語るまでのないほど有名な曲だがこの曲は全ての愛し合う男女と、全

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