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『リンゴの気持ちは知らないけれど ~「メアリーの部屋」からの脱獄~』
1.はじめに
意識のハードプロブレム、つまり物理的な脳のプロセスがどのように主観的な意識体験を生み出すのかという問題は、現代の心の哲学において最もやっかいな問題の一つとされている。
前回のコラム『意識はハート♡プロブレム:知覚・体験・意識の連続性』では、知覚と体験の本質的な同一性や、意識の階層性と連続性に着目し、情報処理の観点から、意識のハードプロブレムは存在しないことを論じた。
今回は、ま
意識はハート♡プロブレム:知覚・体験・意識の連続性
1.ジョージの家
ジョージは優秀なエンジニアだ。彼はTVの仕組みについて徹底的に学び、すべてを理解していた。ブラウン管、電子銃、蛍光体、電子回路……。でも、彼の家にはTVがない。
ある日、友人が彼に尋ねた。
「ジョージ、君はTVのすべてを知っているんだから、TVを見たことがなくても、TV番組を見ることがどのような映像体験なのか説明できるんじゃないか?」
ジョージは自信を持って答えた。
「うむ
成田悠輔に悪意の一票を
まずはじめに断っておきたいのですが、このテキストは成田悠輔の擁護を目的としたものです。その試みが上手くいったかどうかはさておき、それを目指して書きました。ですので、それを承知でお読み下さい。
本稿では、以下の流れで成田悠輔の発言について考察します。
「集団自決」発言の不適切さ
発言の真意は高齢化問題ではなく世代交代にある
著書を踏まえれば、成田の真の関心は22世紀の民主主義のあり方にある
読書感想文「ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう」
意識はアナログ 知識はデジタル「まえがき」を半分くらい読んで、「おもしろそう」「これなら読めそう」と。ところが、かなり難解。「まえがき」の最後に「哲学の本をまったく読んだことがない人には、この本の内容も、十分難しく感じられるだろう。」と書いてあった。
早々に投げ出すことを決めます。それでも最後くらいは読んでみよう。
ん?
「意識経験にかんする物理的な知識をどれだけ獲得しても、実際に意識経験を持
息子との幸福度バトル ~勝利の先に見えたもの~
うちの息子ときたら、私にそっくりで議論好き。大学生になった息子は、春休みで帰省中なんだが、今日も、いつものように議論を吹っ掛けてきやがった。
息子の主張はこうだ。人生のピークを迎えたら、そのまま死んじまいたいらしい。でも、いつがピークなのかわからない。だから、麻薬で幸福度をマックスにして、そのタイミングで さよなら人生 ってわけ。あと、失敗や衰えが怖いから、早めに逃げ出したいとかなんとか言ってた
Thank you for waiting.(←旅行中に覚えた)
2023年12月8日から14日まで、イギリスに行ってきた。10月から、娘が留学中なのだ。
帰宅後、インフルエンザで一週間寝込む。
記憶がだいぶ薄れてしまった。
12月7日は木曜日。平日なので、職場は通常営業。18時閉店で19時出発、というのは、無理のない予定だ。が、こんな日に限って、閉店が19時にずれ込む。少し慌てるけれど、それでもかなり余裕を持った計画ではある。
本当に慌てることになるのは、中
読書感想文「失踪の社会学」
読書感想文
「失踪の社会学」/中森弘樹/慶應義塾大学出版会
親密性と責任
本書ではまず、現代社会は自由であり不自由である、というパラドックスを指摘する。そして、その不自由さの原因は「親密なる者への責任」にあると結論づけられる。
私たちは日常生活において、責任という言葉を深く考えずに使いがちだ。
この本では、責任とは何であるかが丁寧に説明される。
責任という言葉の説明が、本書の最大のテーマとい