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非社会的

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誕生日。なにがめでたい

誕生日。なにがめでたい

景気付けに、ささやかな愚痴から入ろう。

この頃なにがムカつくかって、YouTubeなんかで「祝・登録者2000人突破」とか自分から盛り上がっている奴ら。そりゃあはお前は広告収入とかあるから嬉しいかも知れんけど、ひとりびとりの視聴者にとってはそんなのどうでもいい数字だから、裏でこっそり一人で祝ってくれよと毎回思う。こういう恥知らずな無邪気さ、多くないですか。結婚披露宴での花嫁が親に手紙を読みながら

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鳥のいない鳥かご

ジュール・ルナールの『博物誌』のなかに、「鳥のいない鳥かご」という小文があったのを思い出した。小話みたいなものなのでそのまま引用したほうが楽なのだけど、本が手元にないので、ごく大雑把にまとめてみると、鳥のいない鳥かごを窓にかけているフェリックスという男が「ここに僕はほんらい鳥を入れてもいいのだけどあえて空にしておくんだ。そうすることでほんらい空を飛び回るはずの鳥が少なくとも一羽は自由でいられるのだ

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生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

「頭の狂った人間を病院に運ぶための黄色い救急車がある」という古い都市伝説があるが、私にはこれがひどくなまなましいのだ。内容の無根拠さとはうらはらにやけにイメージしやすいのも恐い。なんでだろう。黄色というのが妙に不気味の印象を煽る。子供の頃なら恐いのも分かるけど、今も恐い。というよりむしろ今の方が恐い。精神分析学上、これは興味深い問題だ。

フーコー的な「生権力」が支配的となった時代の人間には、多か

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言語快楽の骨頂は「比喩の発明」にある

言語快楽の骨頂は「比喩の発明」にある

三島由紀夫の『仮面の告白』に「若い僧侶のような世故に長けた微笑」という表現が出て来る。ヤングアダルトの時分に小説を読み始めて最初に記憶したのがこれだ。そんな微笑など肉眼で見たことがないはずなのに「うまい、卓抜だ」と唸らされました。その後何かにつけて模倣しまくったのは言うまでもない。全ては模倣から始まるのだ。

ところで名人鬼才の手になるこんな比喩ストックを脳にたくさん詰め込んでおくと何かと重宝にな

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人間の実存に「生産性」も糞もあるか!

人間の実存に「生産性」も糞もあるか!

でかいペットボトルで売られている安物の「ウイスキー」をカルピスウォーターで割るとたいへん美味しい。このごろそればかり飲んでいる。ブレンドは知恵だね。

きのう学生時代の「友人」と飲んでいて何かとイラついた、そしてほとほと虚しくなってしまったので、その分けの一端をここに記して、人間学的考察の糸口にでもしようか。

私は底意地の悪い人間であり、むらっ気の強い人間であり、お愛想の言えない人間であり、ミザ

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吐き出すゲロも枯渇した朝は

吐き出すゲロも枯渇した朝は

賢さ 他人を利用して楽する才覚。

虚しさ(悲しさ) 宇宙そのものが感じている「永遠の寄る辺なさ」が各意識者に分有されて感じられていること。

中年 「何歳までが若者なのか」という問いを立てた瞬間に若者は中年になる。

子供 自分が「暴力」の主体であることに無自覚な没理性的動物。天使に譬える人がときどきいるが多分それはブラックジョークのつもりだろうから反論するには及ばない。 

都市 銭湯と自室以

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満員電車に乗ることは自分を家畜並みに値踏みすることなので「倫理的」に間違っている?

満員電車に乗ることは自分を家畜並みに値踏みすることなので「倫理的」に間違っている?

私は飲食店の行列に並ぶのが嫌いだ。大嫌いだ。「たかが食べもの」のために何十分も待たされることにとても我慢できない。食うために列を成している奴らの卑しい顔を見ていることにも我慢ならない。

でも世の中を見渡すと、待つのが平気な人が結構多いようなのだ。それも百円の回転寿司とかにね。ああ貧乏人は嫌ですね。貧すれば鈍するとはこのことだ。私自身が貧乏だから同族嫌悪が半端ないのかも知れん。もう死にたくなる。人

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この世はギミックだらけ

この世はギミックだらけ

プロレスにおけるギミックとはそもそも何なのか。これには謎が多い。プロレス通を自任する連中に語らせると歴史を紐解いたり蘊蓄を傾けたりし出してやたら長くなりそうな主題である。というかそもそもプロレスという興行自体が謎で覆われている。プロレス関連の著作なんかをいくら読んでもやはり不思議なままだ。「過激」な流血デスマッチの動画なんか見るとますます謎のヴェールが厚くなる。

でもそんなことを言い出すとおよそ

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他人の書くものは大体「もどかしい」

他人の書くものは大体「もどかしい」

人の文章を読んでいて「嘘つくなコラ」と思わないことは少ない。「こいつは本当に言うべきことを回避しているな」と感じた瞬間は肉声で叫ぶ。これは本の虫ケラだったチー牛的大学時代から続いている癖。プロ野球を観るのと同じで毒づいたり野次ったり批判すること自体に中毒性の快感を得ているのだ。性悪といえば性悪だけど、誰でもいちおう思い当たる節があると思う。それにこういうときに毒素を排出しないと一体どこで排出できる

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虫に過剰反応する男にイライラする。でも昆虫Gとは出来れば遭遇したくない。あと阪神は優勝できないかもしれない。

虫に過剰反応する男にイライラする。でも昆虫Gとは出来れば遭遇したくない。あと阪神は優勝できないかもしれない。

バルコニーで全裸になってハイボールを傾けるのがよほど気持ちよい季節になったのはいいのだけど、例の黒光りする昆虫Gの幼虫とおぼしき生き物がかなり頻繁に出現するようになってきた。

二級河川が近くにあってしかも増々繁茂する草木がバルコニーのすぐ真下にあるので室内の昆虫出現率も当然高くなる。いまのワンルームに越してきて最初の夏だけに、いささか不安だ。今後どんな目に合うのかまだ分からない。すでに起こってい

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生きていてもいいですか、ワトソン君

生きていてもいいですか、ワトソン君

ネットワークの接続環境が悪い。安い無線LANルーターはやはりいけません。気まぐれでいつ切断するかわからない。いちいち機器のご機嫌をうかがっている様で、嫌になる。馬鹿らしい。以前はパソコンを開くのが大層楽しみだったのに、最近では苦痛になってきた。そのうえ職業野球のペナントレースもいよいよ面白くなってきたから、緻密にものを考えたり、真剣に書かれた深遠なる論考を精読することが、前よりずっと少なくなった。

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「欲望模倣ゲーム」を降りたいが

「欲望模倣ゲーム」を降りたいが

中古で買ったパソコンでいま本文を書いているのだけど、苛立たされることがいちいち多い。店頭でいじってみて判明しなかった欠点が次々あらわになりつつある。タイピングは大部分身体的な位置記憶に依ってなされることだから、キーボードの配置がすこし変わるだけでも相当に苦労するし、ミスタッチのたびにイライラが募ってしまう。小指がエンターを押したつもりがとんでもないところに着地していたりする。なかでも、いわゆる「矢

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あまりに雑駁な

あまりに雑駁な

私はいわゆる「ゆとり第一世代」に当たるらしいから、「ゆとり世代は円周率を三と教わった」とかいうデマ(ゆとり神話)がいまだに一部で通用しているらしいことにすっかり呆れている。「ゆとり世代」という括りが文脈上蔑称として機能しうることも最近まで知らなかった。つまり「ゆとり世代は打たれ弱い」という種類の物言いを好む人間が一定数あることを知らなかった。だいたいにおいて私は日本の粗雑で底の浅い世代論的言説の大

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「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

ああ上階のガキの足音がうるさい。階段は静かに下りろよ。廊下くらい歩けよ。床の上でそうやってジャンプするなよ。脳が反射的に「嫌がらせ」と解釈してしまうじゃないか。そこは大地ではないのだ。それなりに穏やかだった海にとつぜん荒波を立てるようなことはやめろ。もう本当に止めてくれ。あらためて私は問いたい。ガキというのはなぜどうしてこうも「無神経」なのだろうか。あるいはガキの傍にいつもいる「保護者」はなぜどう

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