坂の上の雲プロジェクト

21世紀の「坂の上の雲」を描く。 気候変動を、日本の未来を変える物語に。 「のぼってゆ…

坂の上の雲プロジェクト

21世紀の「坂の上の雲」を描く。 気候変動を、日本の未来を変える物語に。 「のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて坂をのぼってゆくだろう」

記事一覧

第二共和政とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑯

・普通選挙、社会主義への反動、六月事件  選挙が一週間後に迫った4月16日、五万の労働者たちが市庁舎へ行進した。呼びかけたのはルイ・ブランで、体制から労働者と社会…

二月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑮

  二月革命の前後、「青鞜」という言葉が盛んに用いられ始めた。これは英語Blue stockingsの訳語であるが、以前にも少し触れたように、18世紀半ばの英国に実在した「ブル…

社会主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑭

 1848年という年は、世界史において最も記憶される年のひとつとなった。欧米各国で革命の嵐が吹き荒れ、政治のみならず、思想、文化など様々な方面で後世に多大な影響を刻…

マルクスとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑬

・ヘーゲル左派、マルクス、唯物論  ナポレオン帝国という敵を得て、ドイツにいた人々は一つの民族として一体であるという信念を育てた。その潮流は政治や軍事だけでなく…

ドイツ観念論とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑫

・プロイセン、民族と国民国家、軍隊と「男らしさ」  ここまでは、英仏を軸として性とフェミニズムの歴史について語ってきた。資本主義と三つの革命が後世に与えた影響の…

プロレタリアとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑪

・ナポレオン法典の犠牲者、空想から行動へ、英国の労働者階級  1835年、パリへ戻ったフロラは『見知らぬ女性を歓待する必要について』という小冊子を自費出版する。彼女…

七月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑩

・七月革命、サン=シモン主義、「自由女性」  ナポレオン帝国の崩壊後、フランスでは王政復古が唱えられ、貴族を中心とした旧体制が返り咲こうとしていた。1824年に即位…

功利主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑨

 本章に入ってからというもの、未だに男性の名しか挙げられていないのだが、もうしばらく耐えて頂きたい。女性たちが華々しく活躍したフランス革命期と違い、グージュやウ…

産業革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑧

第三章 産業革命、社会主義、諸国民の春―1763~1848  産業革命Industrial Revolution、というのは奇妙な言葉である。いつ始まり、いつ終わったとも知れぬこの「革命」…

文学と哲学とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑦

 18世紀末に始まったフランス革命は、植民地の動乱やナポレオン時代まで含めて考えれば、ヨーロッパどころか西洋世界の総体を巻き込んでその後の歴史に決定的な影響をもた…

ナポレオンとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑥

・ナポレオン帝国、スタール夫人、ハイチ革命  終わらない混沌の中で、一人の軍人が注目を集めた。ナポレオン=ボナパルトである。対外戦争、内乱の鎮圧において目覚まし…

恐怖政治とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑤

・対仏大同盟、恐怖政治、ギロチン  フランスで国王が処刑されると、危機感を抱いた隣国のイギリス、オーストリア、プロイセンなどは対仏大同盟を結成して革命を抑え込も…

人権宣言とフェミニズムー性から読む「近代世界史」④

・革命勃発、人権宣言、オランプ・ドゥ・グージュ  1789年6月、三部会で国王と特権階級たちが聞く耳を持たないことを知った第三身分の代表者たちは、国民のためを思うの…

フランス革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」③

第二章 フランス革命、共和制、ナポレオン帝国ー1673~1815 ・アカデミー、「コギト」、忘れられた思想家  名誉革命より少し前の1673年、フランスで『両性平等論』とい…

独立革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」②

・啓蒙主義、ルソー、サロンの女性たち  西欧の18世紀は「啓蒙の世紀Enlightenment」と呼ばれる。書籍、新聞・雑誌が無数に刊行されたこの時代、読み書きのできる上流階…

革命、哲学、フェミニズムー性から読む「近代世界史」①

 革命はつねに哲学を必要とする。しかし哲学はつねに革命的であるとは限らない。革命は自由のためにあるはずだが、哲学はしばし誰かの自由を閉ざしてきた。誰かとは貧しい…

第二共和政とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑯

第二共和政とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑯

・普通選挙、社会主義への反動、六月事件

 選挙が一週間後に迫った4月16日、五万の労働者たちが市庁舎へ行進した。呼びかけたのはルイ・ブランで、体制から労働者と社会主義者の排除が進められつつあったことに抗議するものだった。既にルイ・ブランは「労働者のための委員会」をつくり、労働時間を10時間に制限するなど、臨時政府の中で一定の成果を挙げていた。彼はこの委員会に現場の労働者や社会主義の思想家を参加さ

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二月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑮

二月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑮

  二月革命の前後、「青鞜」という言葉が盛んに用いられ始めた。これは英語Blue stockingsの訳語であるが、以前にも少し触れたように、18世紀半ばの英国に実在した「ブルー・ストッキングス」という名の女性主催のサロンがその元である。彼女らはそれまで男性の領域とされていた学問や文芸を志したのだが、ここから意味が転じて、文筆活動に励んで新聞に投稿したり、政治改革を訴えたりする女性を「高飛車で常識

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社会主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑭

社会主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑭

 1848年という年は、世界史において最も記憶される年のひとつとなった。欧米各国で革命の嵐が吹き荒れ、政治のみならず、思想、文化など様々な方面で後世に多大な影響を刻んだ。フェミニズムにおいてもそうである。アメリカでは「女性の権利大会」が開かれて女性参政権が求められ、フランスでは虐げられた労働者とともに多くの女性が街頭に現れて解放を叫んだ。哲学者ジュディス・バトラーの言う、政治に新たな可能性をもたら

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マルクスとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑬

マルクスとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑬

・ヘーゲル左派、マルクス、唯物論

 ナポレオン帝国という敵を得て、ドイツにいた人々は一つの民族として一体であるという信念を育てた。その潮流は政治や軍事だけでなく、音楽家シューベルトの歌曲やグリム兄弟の童話といった芸術、文学にまで及び(ロマン主義)、ドイツ人としての文化と歴史とが遡及的に形作られていった。そのような思潮の下に生きたフィヒテやヘーゲルの哲学も、政府の支持を受けてナショナリズムの形成に

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ドイツ観念論とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑫

ドイツ観念論とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑫

・プロイセン、民族と国民国家、軍隊と「男らしさ」

 ここまでは、英仏を軸として性とフェミニズムの歴史について語ってきた。資本主義と三つの革命が後世に与えた影響のゆえ、19世紀初頭までの近代の主役は、それらを担ったこの両国だと言っても過言ではないからである。しかしナポレオン帝国以降、いわゆる国民国家Nation-stateの成立によって、無数の地域が覇権をめぐり台頭してくることになる。その流れを代

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プロレタリアとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑪

プロレタリアとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑪

・ナポレオン法典の犠牲者、空想から行動へ、英国の労働者階級

 1835年、パリへ戻ったフロラは『見知らぬ女性を歓待する必要について』という小冊子を自費出版する。彼女は自身の体験から、お金もなく、支えてくれる人もいない女性の苦しみを書き綴った。抑圧された者の生存は、繋がりを築けるかどうかにかかっている。フロラは都会に出てきた孤独な女性たちのために、相互扶助的なグループの創設を提案する。さらに女性は

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七月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑩

七月革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑩

・七月革命、サン=シモン主義、「自由女性」

 ナポレオン帝国の崩壊後、フランスでは王政復古が唱えられ、貴族を中心とした旧体制が返り咲こうとしていた。1824年に即位したシャルル10世はそうした反動的な政策をさらに進め、不作も重なったことで人々は不満を募らせてゆく。高まる民衆の抗議の声に対し、王は出版の自由を奪い、議会を無視することで応じた。これにより、シャルル10世は益々力をつけつつあった資本家

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功利主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑨

功利主義とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑨

 本章に入ってからというもの、未だに男性の名しか挙げられていないのだが、もうしばらく耐えて頂きたい。女性たちが華々しく活躍したフランス革命期と違い、グージュやウルストンクラフトが非業の死を遂げた後、ナポレオン法典により女性の従属が決定付けられた19世紀初頭はフェミニズムが停滞を余儀なくされた時期なのである。それが再び動き出すまでには、21世紀の人々にはよく知られる三つの思想潮流が準備されなければな

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産業革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑧

産業革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑧

第三章 産業革命、社会主義、諸国民の春―1763~1848

 産業革命Industrial Revolution、というのは奇妙な言葉である。いつ始まり、いつ終わったとも知れぬこの「革命」は、確かに世界を大きく変えはした。しかし本来は誰かに自由をもたらすものを革命と呼ぶべきだが、この場合、一体だれが自由を手にしたのだろうか?哲学者J.S.ミルは「自由は他者を害さない限りにおいて認められる」と述べ

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文学と哲学とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑦

文学と哲学とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑦

 18世紀末に始まったフランス革命は、植民地の動乱やナポレオン時代まで含めて考えれば、ヨーロッパどころか西洋世界の総体を巻き込んでその後の歴史に決定的な影響をもたらした。この一連の革命は、裕福な市民層の主導した名誉革命とも、白人男性が中心にいた独立革命とも異なり、身分、性別、人種、貧富貴賤の違いを問わず、ありとあらゆる階層の人々が参加したものであった。社会学者のウォーラーステインはこれを「イデオロ

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ナポレオンとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑥

ナポレオンとフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑥

・ナポレオン帝国、スタール夫人、ハイチ革命

 終わらない混沌の中で、一人の軍人が注目を集めた。ナポレオン=ボナパルトである。対外戦争、内乱の鎮圧において目覚ましい成果を上げた彼は、瞬く間に民衆の人気をさらい、1799年にはクーデターにより統領政府を樹立するまでに至る。ナポレオンは「従う女性」をモラルとした。彼が夫を亡くしたグルシー(コンドルセ夫人)と対面したとき、こう言ったとされる。「私は女たち

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恐怖政治とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑤

恐怖政治とフェミニズムー性から読む「近代世界史」⑤

・対仏大同盟、恐怖政治、ギロチン

 フランスで国王が処刑されると、危機感を抱いた隣国のイギリス、オーストリア、プロイセンなどは対仏大同盟を結成して革命を抑え込もうとした。これに対し、共和国政府は全国からの徴兵によって守りを強めようとする。他国との戦争は次第にフランスの優勢に向かい、義勇兵として戦争に加わったサンキュロット(貧困層)たちの勢力が増してゆく。一方、国内の食料危機はいまだ解決をみず、2

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人権宣言とフェミニズムー性から読む「近代世界史」④

人権宣言とフェミニズムー性から読む「近代世界史」④

・革命勃発、人権宣言、オランプ・ドゥ・グージュ

 1789年6月、三部会で国王と特権階級たちが聞く耳を持たないことを知った第三身分の代表者たちは、国民のためを思うのは自分たちだけだと宣言し、宮殿の球戯場で憲法の制定まで団結しようと誓った。7月9日には、彼らは「国民議会Assemblee nationale」として自ら憲法制定に取りかかる。
 7月11日、国王により財務長官のネッケルが罷免される。

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フランス革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」③

フランス革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」③

第二章 フランス革命、共和制、ナポレオン帝国ー1673~1815

・アカデミー、「コギト」、忘れられた思想家

 名誉革命より少し前の1673年、フランスで『両性平等論』という本が出版された。著者はパリの学生プーラン・ド・ラ・バールFrançois Poullain de la Barre。神学や哲学を研究していたプーランが20代で書きあげたとされるこの本は、真に革命的というにふさわしい内容であ

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独立革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」②

独立革命とフェミニズムー性から読む「近代世界史」②

・啓蒙主義、ルソー、サロンの女性たち

 西欧の18世紀は「啓蒙の世紀Enlightenment」と呼ばれる。書籍、新聞・雑誌が無数に刊行されたこの時代、読み書きのできる上流階級を中心として、人々は女性が主宰するサロンに集まって議論を交わした。議論はやがて世論となって社会に広まり、のちの革命への道を整えた。例えばイギリスの女性作家エリザベス・モンタギューElizabeth Montaguは、175

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革命、哲学、フェミニズムー性から読む「近代世界史」①

革命、哲学、フェミニズムー性から読む「近代世界史」①

 革命はつねに哲学を必要とする。しかし哲学はつねに革命的であるとは限らない。革命は自由のためにあるはずだが、哲学はしばし誰かの自由を閉ざしてきた。誰かとは貧しい者、黒人や黄色人種、そして女性である。ここにおいて、フェミニズムが求められた。

第一章 名誉革命、啓蒙主義、独立革命ー1688~1780s

・名誉革命、創世記、ジョン・ロック

 17世紀末、時のイギリス議会は悪政を働いたジェームズ二世

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