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人生学習帳

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BD(双極性障害)、BPD(境界性パーソナリティ障害)、愛着関連、自己愛関連の記事をまとめています。
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岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』を読んで

岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』を読んで

改めて自分を見つめ直すために本を2冊買った。
そして一気に読み終えた。

ひとつは『境界性パーソナリティ障害』。
もうひとつは『絆の病―境界性パーソナリティ障害の克服』というタイトル。

どちらの本もパーソナリティ障害や発達障害治療で有名な岡田尊司先生が筆を執っている。
厳密に言えば、後者は岡田先生とBPD当事者の対話形式で進行されていく共著だが。

前者に関しては、もっとはやく読んでおけばよかっ

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漫画『明日、私は誰かのカノジョ』を読んで、愛着の問題と見捨てられ不安について考える

漫画『明日、私は誰かのカノジョ』を読んで、愛着の問題と見捨てられ不安について考える

サイコミという漫画アプリで『明日、私は誰かのカノジョ』という作品を読んでいる。

ドラマ化もされたので、ご存知の方もいるかもしれない。

既刊は15巻。
まさにいま最終章を迎えているのだが、最近の内容は私に刺さりすぎて読むたびに心を揺さぶられている。

「血の繋がった親ですら信じられないのに、恋愛感情なんていう脆い絆で関わっている他人をどうして信用できるんだろう」(第207話より)

これは今回の

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相談の結果、知ったこと:消去バーストと自殺潜在能力

相談の結果、知ったこと:消去バーストと自殺潜在能力

昨日は通院日だった。

今回は以下の2点を相談したい、と考えていた。

いずれに対しても私にとっては新たな情報が得られたので、忘れないうちに記録しておきたい。

①について:なぜ動けなくなるのか

負の条件づけにより反応が悪い方に固定されてしまっている。いわゆる「凍りつき反応」が生じているのでは?という見立て。

おそらくは幼少期に行われた喜ばしくない学習が脳に染みついている。
恐怖を感じるような

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(メモ)未解決の復讐衝動

(メモ)未解決の復讐衝動

マスターソン著『自己愛と境界例』のまとめがようやく終わろうとしている。

いつかの記事で境界障害トライアドの話をしたがここにきて、その重要性がぼんやり分かったような。

おそらく説明は不十分すぎると思うが、いま閃いたことをメモ程度にまとめておきたい。

マスターソンの説によれば「分離-個体化の失敗が見捨てられ抑うつを誘発し、さらにそれが防衛を誘発する」。

・分離-個体化の失敗

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恥と傷―小此木氏の見解を参考に―

恥と傷―小此木氏の見解を参考に―

ちょっと久しぶり?のnote。

精神科医・小此木啓吾氏の『人間の読み方・つかみ方』という本を読んだ。いろいろ思うところがあったのだけど、ありすぎたがゆえにnoteにはなかなか感想を書けずにいた。

時代の変化とともに日本人の心理はどう変わったのか、というのがメインテーマ。初版は1986年。奇しくも私の生まれ年である。

以前からの関心事である「自己愛的な傷つき」について少し情報が得られた気がする

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気になる言葉

気になる言葉

ハインツ・コフート著『自己の修復』という本の中で出会った、言葉の意味をぼんやり考え続けている。

上記はユージーン・オニールの戯曲の一節である。

コフートは「現代人の自己(セルフ)の病理の本質をこれ以上印象的に述べることができるだろうか」と絶賛し、『自己の修復』内で引用していた。

正直「なるほどね」とすぐには思えなかった。
それはコフートの議論に対する私自身の理解の足りなさゆえだろう。

一文

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「分離-個体化の困難」から考えるBPDの心理的特徴―マスターソンの理論を参考に―

「分離-個体化の困難」から考えるBPDの心理的特徴―マスターソンの理論を参考に―

マスターソンの理論がようやくまとまりをもって理解できそうな気がしてきた。噛み砕いて説明できるか少し試してみたい。

彼は「分離-個体化の困難」という点から境界性パーソナリティ障害(BPD)の心理的特徴をとらえるために、小児科医・マーラーの分離・個体化論を発展させ、持論を展開した。

子どもの発達過程以下はマスターソンが述べた、子どもの発達過程を簡略化したものである。

マスターソンはBPD患者が経

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念願のマスターソンを読み始めた

念願のマスターソンを読み始めた

情報の取捨選択に怪しさは残るものの、H・コフート著『自己の分析』を各章ごとにまとめることができてスッキリ。長い旅だった。

そして結構前から気になっていたJ・Fマスターソン著『自己愛と境界例』を読み始めた。
咀嚼し切れない部分も多々残しつつ、夢中になって読んでいたら全13章のうち9章まで来ていることに気づく。過集中にご用心。

消化不良部分はあとで入念に読み直すとして、概要を知るためにもひとまずは

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太宰治を事例としたBPD関連論文を読んで(ざっくり解説と感想)

太宰治を事例としたBPD関連論文を読んで(ざっくり解説と感想)

太宰治を事例にしたBPD関連論文が、読みものとして面白かった。

論文のURLはこちら。

太宰を事例にし、BPD当事者の心理状態・意識・経験に焦点を当てようとしたこの論文。

人間像や病像を把握できるよう、分析の題材として選ばれたのが太宰の綴方(作文)や書簡(手紙)だからか堅苦しさは皆無。かなり楽しく読めた。

以下、ざっくり解説。

ざっくり解説

上記題材を繰り返し精読し、全体の文脈と照らし

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自分の悪しき特性を見直す(急接近傾向と嫌悪感情)

自分の悪しき特性を見直す(急接近傾向と嫌悪感情)

数日前に「依存」は私を揺らす、なんて仰々しいタイトルで文章を書いたことを少し後悔している。

依存という概念に全ての罪をなすりつけ、対人関係の構築において自分が真っ先に反省すべき点に全く言及できていなかったことに今更、気づいた。

誰に弁明しているの?とツッコむ自分もいないではないが、なんだか自分がとんでもなく卑怯で嘘つきのように思えて苦しいので、つらつらと書いてみる。
(なんだ、結局は自分のため

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「依存」は私を揺らす

「依存」は私を揺らす

BPD(境界性パーソナリティ障害)の感情の不安定性は、対人関係のストレスに起因すると言われている。

さらに最近読んだ本では「苦手なパターンの対人関係の状況になると感情が調節できず、一気に不安や怒りが爆発し、問題行動に直結する」と指摘されていた。

私にとっての「苦手なパターンの対人関係」とはどんなものだろうか?
それを知ることで不要な不安や怒りの爆発を回避できるなら……とこれまでの対人関係を振り

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コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)とは?ごく簡単なまとめと、個人的な感想

コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)とは?ごく簡単なまとめと、個人的な感想

明日は診察日。

前回、コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)という療法を主治医が教えてくれていたことを今更思い出し、論文作成の合間に慌てて調べている。

以下、核となりそうなことをまとめてみる。

〇創始者はポール・ギルバート
自己批判をしやすい人や恥の感情が強い人を対象にイギリスで開発された

※イライラしやすい人にも効くかも?
怒りの背景にどんな傷や苦しみがあるか、目を向ける練習を

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自分の欲求の扱いと、心の分割について―コフートの理論を参考に―

自分の欲求の扱いと、心の分割について―コフートの理論を参考に―

自分の欲求(意見や願望)の扱いが下手、である。

基本的に欲求の存在を見失いがちなのに、突然欲求が暴走することもある。

なぜ私はこんなに欲求の扱いが下手なのか。
そして欲求にまつわる「心の構造」はどうなっているのか。

そのあたりをコフートの理論を参考にしながら考えてみたいと思う。

欲求の扱いが下手な人間の末路

幼い頃から自分にウソをつき続けた。

本当は欲しいものを「欲しくない。全然いらな

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現実と虚構―創作物を楽しむために―

現実と虚構―創作物を楽しむために―

パーソナリティの問題を何かしら抱える人は「現実検討能力」が低い……といろんな本で目にしたことがある。

しかし実際にはその言葉の指し示す内容は漠然としか分からず「そういうものなんだな」としか思えていなかった。

そんななか「ああ、こういうことだったのか」と納得できる具体例を見つけた気がしたので、書き残しておきたい。

現実性の確信とは

人間は現実世界を生きている。
一方で劇や小説あるいは漫画はフ

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