マガジンのカバー画像

詩/散文

26
この感情のない文字ばかりが溢れる半透明の世界に自分の言葉をぽつりと置くのに違和感を感じたので、投稿を辞めた。ただ詩作自体は今も変わらず続けている。 私は矜持や虚栄心のためではなく… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】 無題 2024年2月16日作

【詩】 無題 2024年2月16日作

彼らの目が、
私をみた。

心の目が、彼らに訴えかけて、
やめた。

彼らは私をおいて
扉の向こうへと駆けていった。
彼らの急ぐ先には破滅しか待っていないことも知らずに。

私は扉を閉め、
鍵を掛けた。
あの穢れた笑い声が聞こえることはもうない。
私は彼らとは反対の方角へと歩き出す。
確かな足どりで、未踏の地へと歩を進めていく。

茂みを分けて踏み入る山。
光は遠いが、
そこに溢れているのだから。

【詩】 扉 2024年2月7日作

【詩】 扉 2024年2月7日作



私は歩いている。
ものすごい速度で歩いている。

どうやって抜けてきたかもわからない道が
後ろに続いている
暗闇の中に何があったか、
どうやってそれらを通り過ぎていったのか、
私は最早覚えていない

「さらに奥に、さらに高く」

私は歩いている。
疲れる気配もなく歩いている。

すべての虚構と欺瞞と悪夢を
ゆっくりと閉ざされていく扉の向こうに残したまま、
私は迷いなく鍵をかける。

「さらに

もっとみる
【英詩+翻訳】Missing Piece/欠片 2024年1月26日作

【英詩+翻訳】Missing Piece/欠片 2024年1月26日作

【English】Missing Piece

Every time my heart aches, do I yearn for your warmth ever so more.
To me, you were the only sanctuary from this heartless world,
that teems with deception and pain.

Tell me y

もっとみる
【詩】 無題 2024年1月25日作

【詩】 無題 2024年1月25日作

世界に溢れる苦しみが
私の心を傷めます
あなたの流す泪まで
私の頬を伝います
あなたの過去が私をも
ひどく悩ませ苦しめます

同じ幸せ願うのに
何故幸福は対立し
手を握り合うこともなく
その掌は人を打ち
明るく生きたい人々は
何故お互いを傷つける

誰もが求む世界には
殺し合いなどありませぬ

時計の針は進みます
たった今この瞬間も
誰かが生命を絶つ音が、
誰かのすすり泣く声が、
絶望の音(ね)が

もっとみる
【詩】曙光 2024年1月8日作

【詩】曙光 2024年1月8日作

曙光

薄雪の覆いかぶさる木々がつくる窓から覗く
どこまでも続く雪原と
どこまでも続く樹々と
どこまでも続く山々と
どこまでも続く世界の果てに見える純白の光
いつか夢見た黎明の仄明かり

私はまだ歩き続ける。
私はこの旅を続けなければならない。
あの陽光の満ち溢れる世界に
足を踏み入れるまで。

【詩】無題 2024年1月2日作

【詩】無題 2024年1月2日作

私はあなたの名前も顔も知らないけれど
覚えている、私たちがアンドロギュヌスだったこと
私達は引き裂かれた半身をずっと探していること
異なる躰に入っている同一の魂だということ
だから、どんなに過去に押し潰されそうでも、
生きて、生き延びて、私に会って。
貴方が教えてくれたように私達は独りではないから
眩しい貴方の光に届くように
私はこの暗闇から起き上がる
丁度16時間前私が送った時間ではなく
私の過

もっとみる
【詩】雲 2023年11月20日作

【詩】雲 2023年11月20日作



私はこの世に生を享けて
あたたかな春の日差しの中を駆け回った
私の顔には影の入り込む隙間もなく
屈託のない日々が続いた
草原に寝転がって、ただ青い空を眺めた
雲が流れていく

私は世界の複雑さを知り
木陰で一人本を読み
青い空を見ていた
雲が流れていく

暗闇の中に投げ込まれた私は
必死に光を探した
私は長い長い放浪の末
自分に戻ってきた
私は夜空に光る一番星になった
朝が来た
雲が流れてい

もっとみる
【詩】朝のバス停 2023年11月20日作

【詩】朝のバス停 2023年11月20日作

朝のバス停

冬の朝、バスを待っていた
冷たい風が頬に吹き付けてくる
朝日が私の顔に降り注ぐ
冬の空気を吸って本を読んでいる
この瞬間にもバスが近づいてきている
永遠にこのままで、バスが来なければいいと思う。

【散文】散歩 2023年11月16日作

【散文】散歩 2023年11月16日作

散歩

まるで四月のようにやわらかくうららかな陽光の中を歩きながら考えた。大人になることについて。「いらない」と捨てた、今では愛おしく大切な一瞬一瞬について。いつの間にか過ぎていった幼年の日々について。

あゝ、終わったのだ。人生の春が終わってから気づいた。過ぎ去ることをあんなに強く望んだ過去が、届かなくなってからこんなにも大切で尊くなったのだ。今更になって気づいた。戻らない季節に手を伸ばしながら

もっとみる