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90后 https://instagr.am/上野から茉莉子/

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私たちはなぜ悩み苦しむのか?

 この文章では、夏目漱石の作品において性欲や恋愛などの人間の自然の感情と近代的な社会規範との相克がどう描かれているのかを、『門』を分析しながら論じていきたい。こ…

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5か月前
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新興写真とモダニズム建築

 白黒の陰影と曲線、直線、規則正しく打たれた複数のドットが目に入る。画面上部にはなんの装飾もない広い鉄板がばあんと存在していて質感が伝わってきそうなくらいに近い…

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5か月前
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エモい部屋の個性

 都市空間の様相を収めた写真は世に溢れている。例えばおよそ100年前、新興写真家堀野正雄は近代化を遂げた都市東京を、関東大震災後の巨大近代建築を写真に撮ることで表…

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5か月前
7

びゅーん

シェアハウスに引っ越してきて2ヶ月が経った。 そして、「よし、引っ越そう!!」 と決めたのである。 腰を落ち着かせようとするも引っ越しを完了して生活の方を やっ…

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11か月前
2

テレビを見なくなった

 テレビを見なくなった。本当に見なくなった。ある日突然見るに堪えなくなった。真実を求めてネットに潜ったわけではない。それまで楽しめていたテレビ、ラジオ、本、音楽…

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1年前
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何日経っても僕のお父さんは帰ってきませんでした。

 なんにちたってもブンのお父さんは帰ってきませんでした。森のなかにひっそりと建つ、木でできた小さなおうちにブンと病気のブンのお母さん、そして大きなくつを残して。…

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1年前
5

こんな夢を見た

 こんな夢を見た。  気が付くと私は一人でぽつんと砂漠にいた。周りには何もなく、見渡しても地平線が見えるばかりであった。薄暗かったが、日は落ちていなかった。  私…

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1年前
5
私たちはなぜ悩み苦しむのか?

私たちはなぜ悩み苦しむのか?

 この文章では、夏目漱石の作品において性欲や恋愛などの人間の自然の感情と近代的な社会規範との相克がどう描かれているのかを、『門』を分析しながら論じていきたい。この作品には社会規範を内面化してしまったがためにそれと自身の自然な感情との間で苦悩する近代人の様子が描かれている。そしてこの苦悩から逃れられないことをこの物語の形式上からも言うことができるということを述べていきたい。
 『門』で宗助は友人安井

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新興写真とモダニズム建築

新興写真とモダニズム建築

 白黒の陰影と曲線、直線、規則正しく打たれた複数のドットが目に入る。画面上部にはなんの装飾もない広い鉄板がばあんと存在していて質感が伝わってきそうなくらいに近いが、下部に行くにつれ遠近法で小さく写っている。その鉄板の両側には奥の方へぐわあんと延びた曲線が2本ある。その2本を繋ぐ梯子段のように横にまっすぐな鉄骨が一定間隔に平行に取り付けてある。左側の曲線が作る半円の中にも同じく横にまっすぐな鉄骨が一

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エモい部屋の個性

エモい部屋の個性

 都市空間の様相を収めた写真は世に溢れている。例えばおよそ100年前、新興写真家堀野正雄は近代化を遂げた都市東京を、関東大震災後の巨大近代建築を写真に撮ることで表現した。戦後日本は経済発展を遂げ、東京は超高層ビルが立ち並ぶ世界有数の大都市となった。堀野の写真はそのような東京という都市の性格をいち早く捉えていたと言えるだろう。では、現代の都市を捉えた都市写真はどのようなものなのだろうか。そしてそれは

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びゅーん

びゅーん

シェアハウスに引っ越してきて2ヶ月が経った。

そして、「よし、引っ越そう!!」

と決めたのである。

腰を落ち着かせようとするも引っ越しを完了して生活の方を

やっていこうとするが、どうも細かいことが気になってきて仕様がない。

潔癖症というか、強迫性障害的というか、この家のここがあまりにも汚すぎ

る! と気になりすぎて夜も寝られないのである。

そうかと思えば、このままここでやっていける!

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テレビを見なくなった

テレビを見なくなった

 テレビを見なくなった。本当に見なくなった。ある日突然見るに堪えなくなった。真実を求めてネットに潜ったわけではない。それまで楽しめていたテレビ、ラジオ、本、音楽がことごとくダメになった。テレビ番組やラジオ番組に関しては毎週楽しみにしていたお笑い番組で素直に笑えなくなり、番組内容やCMの軽薄さに馴染めなくなった。その軽さがよかったのではないのか。読めるなら読めるだけ読みたいと思っていた小説もすべて同

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何日経っても僕のお父さんは帰ってきませんでした。

何日経っても僕のお父さんは帰ってきませんでした。

 なんにちたってもブンのお父さんは帰ってきませんでした。森のなかにひっそりと建つ、木でできた小さなおうちにブンと病気のブンのお母さん、そして大きなくつを残して。
 お父さんはおうちを出るまえにブンに、お母さんのために医者を呼びに行ってくると言っていました。しかし生まれてからおうちを出たことのないブンは、お父さんがどこに行ったのかさっぱりわかりませんでした。ブンがベッドで寝ているお母さんにそのことに

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こんな夢を見た

こんな夢を見た

 こんな夢を見た。
 気が付くと私は一人でぽつんと砂漠にいた。周りには何もなく、見渡しても地平線が見えるばかりであった。薄暗かったが、日は落ちていなかった。
 私は当てもなく歩いた。しばらくすると、いつの間にか付いて来ていたお天道様が話しかけてきた。
「妻子は有りますか。」
「ええ、有りますとも。」と私は答えて、どうしてそのようなことを聞くのかなと思ったが、深くは考えなかった。まだお天道様は空から

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