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イルミネーションが綺麗でさ。
悲しい時ほど街のイルミネーションが嫌に綺麗に見える。汚い水ほど綺麗な花を咲かせる蓮のようだ。
街灯や常夜灯、車のハザードランプや赤信号、光るものは街の至るところに溢れているが、イルミネーションは、他とは違う輝きで人々を恍惚とさせたり、反対に淋しさを植えつけたりしている。無機質な枯れ木に巻き付けられた'それ'は一粒一粒が小さい。その小粒な灯が連なり、広がりを見せ、木全体に満点の星がまとわり付いたよ
3枚の「嫌われカード」を抱きしめて
3枚の「嫌われカード」タロットカードには3枚の嫌われ者がいる。
大アルカナ(『正義』とか『世界』とか有名なカード)22枚で嫌いなカード選手権を開いたら、間違いなく票はその3枚に集中する。集中した上で票を三分割させて混沌を極めるだろう。
もし大アルカナが高校生で22人のクラスならば、教室の隅でエロゲの話をしている三人に、女性のカード……『女帝』辺りが「キモーい! みんなぁ、あいつら見たら目が腐る
『かつら飛ばし』(超短編小説)
できることなら、目を覆いたかった。
目の前にいるのは、私の知っているいつもの彼ではなかった。つむじ風に吹かれ、カツラを必死に追いかける情けない男だった。
*
その衝撃的な出来事の後、私たちは公園のブランコに腰を下ろした。交わす言葉は何もなく、気まずい空気だけが流れていた。
「あの・・・なんか、ごめん」
「何が?」
「・・・さっきのこと」
いつもの自信に満ちあふれた