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詩集 第9部

30
今まで書いた詩をまとめました。
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記事一覧

【詩】放浪猫

【詩】放浪猫

われは 家をもたぬ者
われは 人目をはばかる者
われは ひだまりを求める者
われは 硝子のもこうを羨む者

ときには 不吉に姿をあらわして
ときには 藪陰で隠れたり
ときには 夜中に口笛をふき
ときには 縁の下に住みついたり

われは 闇夜をまとう者
われは 虹の瞳を輝かす者
われは 細い爪を隠す者
われは 暮らしを求める者

【詩】独白

【詩】独白

海に投げいれた
ちいさな思い出
ちいさなおもちゃ
  早朝に流れゆく
  白い星屑のようで
  後悔をした

砂塵ほどの弱い決心の
ゆるい綱で束縛して
なにを成長というか
  目のまえに広がるは
  透きとおる大海原
  後悔をした

【詩】あかい水晶

【詩】あかい水晶

りんごの皮
くるくる おちて
しまもよう
さわやかな香りが
ゆびさきにあいさつ

りんごの皮
とげとげ つくり
こうさぎよ
愛らしいすがたに
くちびるはすすむ

りんごの皮
するする こすり
あかい水晶
いじきたなくても
白いきばをたてる

【詩】感情導線

【詩】感情導線

空気のゆれ
稲妻のように
肌をさす
ビリビリと感電

空気のゆれ
未熟な楽器のように
耳をつらぬく
悲痛でくるしい

空気のゆれ
自由なピアノのように
心を弾く
明るくこわい

空気のゆれ
空気のゆれ
どこまでいっても
空気は振動す

【詩】さざめ

【詩】さざめ

夜があけて まだ
白霧がたちこめる

寒冷の指は 肌をなで
あたたかな朝をつくりゆく 

黒の陶器には あまい渦
あつい波は血流をゆく

【詩】呼びごえ

【詩】呼びごえ

天かける空に
青空を斬りすて
あらわれた翼

おおきな影をみた
ひとたび夜になり
ひとたび朝になる

目覚めの鐘がなり
はくちょうは冬をよぶ

【詩】ちいさくあい

【詩】ちいさくあい

あまい あまい
とろける まほう
少年少女は
よごれを 知らずや
ほおばりゆく

君にささげる 愛のかたち
とけてなくなる 消耗品
ちいさく かわいい抵抗
バラより純粋
ちょこれゐと

【詩】夜明け

【詩】夜明け

おぼろげに 夢のように
ささやかに きえてゆく
忘れたくない 思い出が
私のなかで 泣いている
忘れたくない 思い出よ
  夜は明ける
    夜は明ける
      夜は明ける

いくたびの 願い星
指をおり 願っては
幻想のなかに とじこめて
私のなかで 泣いている
忘れたくない 思い出よ
 嘘でもいい むなしくて
 声をかける 人もなく
 切りとって 離れないで
  夜は明ける
    夜は

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【詩】まっしろ

しろい射光
 しろい雪
  しろい海原
   しろい雲

そのすべてが
わたしに一点集中
 目がやける
 目がやける

しろい吐息
  しろい世界

【詩】冬のあさ

【詩】冬のあさ

玄関さきに おおきな足跡
いくつもの雪を ふみしみて
苦労も汗も おきさって
わざと ありありみせていく

郵便受けには 手紙あり
すこしの灯油が 冬らしい
くもり硝子の むこうには
つもりつもった 雪や雪
家の裏には 車の音

【詩】賢犬

【詩】賢犬

まわせ まわせ
おいかけまわせ
その 爪のある四肢で
野山をかけ

まわせ まわせ
おいかけまわせ
その 司令塔の鼻で
宝をさがせ

まわせ まわせ
おいかけまわせ
その するどい牙で
勇ましくあれ

まわせ まわせ
おいかけまわせ
その 愛らしいしっぽは
きみのもの

【詩】雪山にて

【詩】雪山にて

白山に
 はねる はねる
      はねるるる
小雪をちらして
精霊のように

白山に
 はねる はねる
      はねるるる
雪のかたまり
ひとりでにゆく

白山に
 はねる はねる
      はねるるる
羽のようなみみ
白兎は野をかける

【詩】つみき

【詩】つみき

つみきをたかく 晴れたかく
ゆがんだ地面に 手はこばみ
ひと風嵐 いまは敵
天までとどく 籠の孤城
三角屋根を 大一番
地鳴りがひびき 瓦礫あり
三角屋根に 意味はなし
耳のおくに 崩落のさけび

【詩】冬の呼吸

【詩】冬の呼吸

ひとつ 息を ただよわせ
北風は 髪を ゆらしゆく

ひとつ 息を とどまらせ
積雪は 音を かなでゆく

ひとつ 息を のみこんで
からすは 雪を さしてゆく

ひとつ 息を はきだして
耳の 痛さに よわりゆく