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様々な思い出が走馬灯のように流れていく。人生は短し、されど人生は楽し。
整形外科に何度も通っている謙也一家だが、タクシーで息子と二人で行った。病気を気にする太刀ではなく、ほっとけば治ると思っている。「私がお金を出すから、息子の腱鞘炎の治療のついでに行っておいで」と男気を出す優子。これ以上の拒否は、できないと謙也は、「明日、一緒に行くよ」と返事をした。内心、医者に糖尿病だと宣告されるのが怖いので、拒否し続けてきた経緯がある。
「葉梨整形外科」は、謙也一家の係り付けの医
美佐江のバルセロナ放浪記
美佐江は、まだ高校2年生だ。女子校の中で、目立たない存在だ。短大の文学部に入って、会社勤めをして、そこでかつこよくなくてもいいから、真面目な男性と結婚して、子供を産んで、慎ましい家庭を作りたいと思っている。
昭和の時代は、慎ましく社宅に住み、貯金をして、いずれ郊外の一戸建ての家を持って、家族仲良く暮らすのが、みんなの共通の夢だった。サラリーマンと言う言葉が定着し、誰もが真面目に働いて居れば、郊外
日本の中のフランスのような葡萄園の思い出。
謙也の高校時代に相模原市にワイナリーの広大な葡萄園があった。謙也は、親友の光ちゃんと女性のシャンソン歌手が来ると言うワイナリーに二人で訪ねた。無知のなせる技だった。
電車とバスを乗り継いで会場に到着した。大勢の音楽関係の大人達や若干のセレブ、ワイン愛好家、フランス人など、大勢の客が、ワイングラス片手に談笑していた。「どこにいるんだろう」と光ちゃんは、好奇な目でシャンソン歌手を探した。意外にも、彼
コーヒーと茶道とキャンプと
毎日のように深夜に猫が、襖をガリガリする音で起こされる謙也。それでも居間と寝室がわりにしている和室で寝ている謙也は起きる。すぐにトイレで用を足して出てくると、台所の食洗機から洗い終わった皿や箸、スプーンなどの食器を全部、それぞれの棚に入れる。ほんの十分をあれば終わる。「食洗機の下にあるゴミの部分も綺麗にしておいてね」と妻の優子に口が酸っぱくなるほど言われているので、ゴミのトレイを水洗いして終了だ。
もっとみる社会主義でも共産主義でも資本主義でも民主主義でもない新しい世界が必要
何だから、社会そのもののシステムが狂ってしまったように感じている謙也は、社会主義でも共産主義でも資本主義でも民主主義でもない世界が必要だと思っている。
1920年代から1930年代前半にかけて流行した文学で、虐げられた労働者の直面する厳しい現実を描いた「プロレタリア文学」が文壇を席巻した時代、「円本(えんぽん)の流行によって、文学者の収入が急増。しかし、まともな作家は、失業時代だったと聞いた謙也