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生命保険事業について考える

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生命保険業界の過去、現在、未来について書いた記事を集めたものです。 就活生や生保業界に入りたて(または入ろうとしている)方に「これさえ読めば業界のことが大体分かる」と思ってもら… もっと読む
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記事一覧

固定された記事
フィンテック革命の中で見えてきた生保の将来像

フィンテック革命の中で見えてきた生保の将来像

この本を読んでいて思わずため息が出てしまった。

これは金融分野の新潮流、エンベデッドファイナンスについて取り上げた本だ。

エンベデッドファイナンスというのは、消費者生活と密な接点を持つ非金融事業のフローに、金融サービスを組み込む手法のことだ。

フィンテックにおける第三の波と言われている。

ECサイトで多様な決済方法を提供したり、口座開設をスピーディに行うなど、消費者体験の向上に大きく貢献で

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大腸内視鏡検査に行ってきた

大腸内視鏡検査に行ってきた

※この文章は若干ですがシモな表現が出てきますので、お食事前後に読むのは控えたほうが良いかもしれません。

大腸内視鏡検査を体験してみた

お尻から血が出るからと消化器科にかかり、いぼ痔ですねと診断された後、「出血の原因が痔だけでない場合もあるので、内視鏡検査をしましょう」と言われた。

痔の診察からこれってやりすぎじゃない?とも思ったが、医師から勧められるとなかなか断りにくい。これも一つの人生経験

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ペット保険が保険業界にとってアツい理由

ペット保険が保険業界にとってアツい理由

ペット保険になぜ業界の注目が集まるのか

保険の業界人向け新聞に保険毎日新聞(通称ホマイ)というものがあるのだが、眺めていると最近明らかに増えてきた分野がある。

ペット保険である。

新聞記事というのは編集者が「ニュースバリューの有無」チェックしており、取り上げられる頻度が多いということは「今アツい分野」とみなしているということだ。未来予測の基本は定点観測であることを改めて思い知らされる。

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保険商品の新・差別化戦略

保険商品の新・差別化戦略

暑くなる日本の夏と熱中症保険

子供の頃から言われていた地球温暖化が、ついに実感できるほどまで進行してきた。毎年のように夏の最高気温が更新され、街中では男でも日傘を差している人間が増えている。

実際に日傘をさしている友人曰く、「かなり熱を防ぐことができて、一度やったらもう元には戻れない」とのこと。一方、女性は持ち歩き型の扇風機を使用している人も多い。

さて、真夏や真冬は死亡率が高まる。理由は熱

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少額短期保険が業界の革命児になるにあたっての課題

少額短期保険が業界の革命児になるにあたっての課題

新しい市場環境に対応する動きとして注目を集める少額短期保険保険業界以外も含めてさまざまな会社が参入しているのが少額短期保険分野だが、登録事業者を眺めているだけで今後の展開がいろいろと想像できて楽しい。ワンコインほどの低価格で加入できるのが売りで、相当な販売数を挙げた会社もある。特に保険離れが加速している若年層に向けて、安価で手軽な加入体験を与えながら保険の裾野を広げようという意図がメインのようだ。

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差別化の努力がかえって戦況を悪くする話と、保険比較の動線設計について

差別化の努力がかえって戦況を悪くする話と、保険比較の動線設計について

健康診断結果でビビる

健康診断で肝臓の数値に異常が見つかった。

振り返ると、毎日夜10時近くまで働いて、夜6時ぐらいに菓子パンを間食で食べ、帰った後もコンビニ飯を食べる。1日4食で完全にオーバーカロリーだ。

糖分摂取量をおさえるために、無糖のコーヒーと市販の牛乳を混ぜて飲んでいたが、牛乳も結局のところ脂肪を含んでいるので、カロリーをとっていることになる。ダメ押しで休日のグルメ散策。ちなみに、

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生命保険はなぜ斬新な新商品が出づらいのか

生命保険はなぜ斬新な新商品が出づらいのか

情報発信を重視しない業界

友人から「ベンチャーキャピタル業界はメリットがあるから情報発信が活発にされている」というのを聞いてなかなか興味深かった。発信する側は資金集めや人集めにプラスになる。情報の受け手は優良な投資先を見極めるための参考とする。どちらの立場も強めのメリットがあるから、発信と受信が活発になされるのだ。

翻って生命保険業界はどうか。お世辞にも業界情報の発信が活発とはいえない。熱心に

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保険業界の実験場、少額短期保険における綺麗事抜きの現在地点

保険業界の実験場、少額短期保険における綺麗事抜きの現在地点

インシュアテックにはIT業界の手法が通じない?

少額短期保険はその名の通り、提供する保障が短期かつ少額で、既存の生命保険会社とは異なる法規制が敷かれており、他業界からの参入が相次いでいる。新しい保険の実験場ともいえる状況で、イノベーションの最前線といえる分野である。

本書の終盤には少額短期保険事業をやっている人たちのインタビューが載っている。中でも複数人が言及していたのは「保険は契約者保護の規

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生保営業は地獄の現場?

生保営業は地獄の現場?

書店で平積みになっていたので衝動買いした。内容は生命保険の営業現場で、「入社三年神話」と、思うように成果を上げられない自身の営業スキルの板挟みにあい、心も身体もボロボロになってゆく筆者の日々を綴ったものだ。

ここでは本書の内容を土台としてさらに踏み込んで思考を進めてみたい。

不幸なミスマッチを避けるために

生命保険の営業は「成り上がり博打コース」である。「成り上がり博打コース」とは私が勝手に

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身内であっても等価交換が重視される、令和の家族観

身内であっても等価交換が重視される、令和の家族観

労働分担の均衡点が変わった

女性の社会進出により、家計を支える経済力は男だけのものではなくなった。すると、次に貴重な資源である労働力をめぐり、家族間で闘争が起きる。これが令和の時代における家族観の大前提である。

なお、ここでの労働とは、ビジネスの世界における労働に加え、家事・育児・介護など全般を含んだ広い意味のものを指すこととする。

まず、従来の「専業主婦+家事・育児・介護を丸投げする夫」と

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結婚制度から外れたパートナーの在り方と、生命保険の未来像について

結婚制度から外れたパートナーの在り方と、生命保険の未来像について

自分だけの幸せを追求しやすいマッチングアプリの世界

パートナーや家族の在り方を考える上で、この本は極めて多くの示唆を与えてくれた。めっちゃ大雑把に要約するとこんな感じだ。

では、具体的に救済されるのはどんな人たちか?

オーナー社長は事実上のパートナーを会社の役員にして報酬を払っていたりするので、成功している経営者は婚姻関係以外にも契約を結ぶ方法はある。

しかし、世の中の大半は儲かっていない

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就業不能保険の各社比較からみる生命保険業界の思惑

就業不能保険の各社比較からみる生命保険業界の思惑

保険商品名の内包するイメージと、実際のギャップ

就業不能保険、という商品名を聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。働けなくなった時に備える保険というのは分かる。

しかし、ここでいう「働けなくなった」とはどんな状態のことか。境目は各社それぞれだが、入院保障、身体障害状態、それに相当する自宅療養あたりが保障範囲になることが多い。なぜかといえば、公的な認定が受けられて支払基準が定めやすいからである

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生保業界で営業をやりたくないけど、キャリアを積み上げたい人の戦略

生保業界で営業をやりたくないけど、キャリアを積み上げたい人の戦略

生命保険業界で生きていく場合、営業で圧倒的な成績を叩き出すのは昔から有力な出世コースである。「生命保険は売るのが難しい商品である」というのは古今東西変わらない。そこを乗り越えて会社の売上に直接貢献できるのは、強力な抜擢理由だ。

ところが、入社時点で「営業は嫌だ」という感情を持つ人間は珍しくない。主だった理由としては「ノルマに追われたくない」、「お客さまから直接感情(主に苦情)をぶつけられるのは嫌

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保険契約の転換を、営業心理と絡めながら掘り下げてゆく

保険契約の転換を、営業心理と絡めながら掘り下げてゆく

転換との上手な付き合い方

保険契約の中には転換という方法がある。要するに既に加入している保険を下取りに出して、通常よりも安く加入する取扱いのことだ。

保障範囲が被っている場合、保険会社目線でいうとリスクが変わらないので、加入時審査が不要になる場合もある。

なぜ安く加入できるかというと理由は簡単で、元契約の中にある積立金額を保険料として充てるからである。

自分の財布から保険料を新たに払う時に

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