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ワタシがイタメテきたからよ - 傷心を誇る -
「気持ちいい〜!なんで痛いところ分かるん?ランちゃん、さすがやわ」
タイ古式マッサージが好きで、ランちゃんのマッサージ店に10年近く通っている。タイではマッサージは国家資格なので、資格を持っているタイ人の腕はいいことが多い。今年還暦を迎えるランちゃんは、とりわけ上手だ。
「ワタシがイタメテきたからよ。ワカイヒト、ちしきでツボおす。ワタシ、ケイケンでツボおす。じぶんがイタくなると、あいてのイタミも
白みそ丸もち - 再現できない味 -
私には8年間、お正月がきていない。80歳を機に、祖母がおせち料理を作らなくなったからだ。
祖母の作るお雑煮は、白みそに丸もちが入った、関西では一般的なもの。だが、お店のそれに比べてとても甘く、濃厚で、野菜の風味がたくさん効いていて、家庭を感じるやさしい味が、美味しくてたまらないのだ。幼い頃からその味でお正月を迎えてきた私にとって、祖母のお雑煮のないお正月は、新年がきた気がしない。
あの味を再現し
母がくれた時間 - 当たり前を贈る -
透きとおるように穏やかな顔をして隣で眠る。その安心しきった表情を眺めれば、どんな苦労も吹き飛んでしまう。そっと頬にキスをし、床を軋ませないようつま先で歩いてパソコンへと向かう。
四半世紀以上歳下の2人にこんなにも入れ込むようになるとは、学生時代のわたしが知ったら驚くでしょう。子育てをする上で、諦めることはたくさんあります。体型、美容、健康、睡眠、仕事、お金、恋愛、人付き合い、自分の時間。それでも、
小さな象徴 - 未来のためにできること -
「あ、すみません。あの、オムツ替えの台がここにしかないらしくて、、すぐ出ていきますんで」
お店の人に案内されたという男性は、女性トイレで目が合うなり、慌てて私にそう言いました。
「ゆっくり替えてください。私も子どもが2人います。大変ですよね」
「すごいなぁ。本当は、もう1人、ほしいと思っていたんですけど、うちは無理そうです」
男性は、慣れた手つきでオムツを替えると、小さな子どもを連れ、その場をあと
酸っぱい仕事 - 競争より共存 -
海も山もない。高層ビルで縁取りされた空を見上げて言う。
「ここにはなんでも揃ってる」
学生時代の私は無敵だった。大阪から上京し、ひとりで生きることに抵抗がなく、なんの根拠もない自信に溢れていた。山手線の駅ごとに異なるメロディーに、環状線のメロディーを重ねながら、都会の音たちに恋をしていた。どこへでも行ける気がした。
でも、ハタチを過ぎたころからだろうか。慌ただしい社会の波に、自分がのまれるようにな
無意味な雑談の意味 - Ska vi fika? -
お迎えの帰り道、公園へと引っぱられていく。いつもは「お腹すいた」とまっすぐおうちに帰りたがるのに、今日はいうことを聞かない。
こんなとき、時間がないとイライラしてしまう。でもふと、なにかお話したいことがあるのかもしれない、と感じて、「少しだけね」とついていってみた。
私に、フィーカという習慣がついたのは中学生のころ。母は私と過ごす時間を大切にしてくれいた。
フィーカは、スウェーデンの生活習慣で、
伝える、ではなく、伝わる
3歳児神話を信じていた私は、子どもがうまれたら、小さいうちはずっと子どものそばにいて愛情を伝えるべきだと思っていました。
3歳児神話とは、"3歳までに母親の愛情にたくさん触れなければ、その後の成長に悪影響を及ぼす"という考えです。かつては女性の就労を否定する理由にされてしまうことがありました。
でも、子どもが生まれて、気がついたのです。母親からの愛情に限る必要はないということ。そして、育児は3歳ま