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掌編『だから、さようなら』
だから、さようなら著者
小野 大介
高校の卒業式の終わりに、幼なじみの彼女から告白された彼は、家出を決意した。
彼女に出逢ったのは幼稚園の頃だった。真向いの家に引っ越してきたのだ。
同い年だった二人は、性別は違えども妙に馬が合い、いつも一緒だった。親同士の仲も良かったので、家族ぐるみの関係をずっと続けてきた。
卒業式には両方の親が参加し、自分の子でもないのにしっかりカメラを回して、
掌編『凍りついたメッセージ』
凍りついたメッセージ著者
小野 大介
これより音声記録を開始する。
私は第二次救助隊のメンバーである。
我々は今、南極点付近に設置した基地にいる。
基地との連絡が途絶えて、すでに半年が経過している。先行した第一次救助隊との連絡は一切取れていない。
猛吹雪のせいで飛べず、今になってようやく来られた。
皆、生きていると願いたい。
食料の貯蓄は充分にあるだろうから、その点は心
掌編『母上様とお雛様』
母上様とお雛様著者
小野 大介
母が、一人で雛人形を飾っている。
その様子を離れたところから見ている、私。
この光景を見るのは、これで何回目だろう?
あの雛人形は私が生まれたときからあるけど、覚えているのは四つか五つだから、十回も無いはずだ。
母が幼い頃に買ってもらったという豪華な雛人形。飾るときはいつも自分一人でするぐらい大切にしている。つまり宝物だ。
それを私は、この後