山桜桃 えみ

東北育ちの都内OLです。短歌とエッセイ、たまに短編小説。Twitterはこちら→@ew…

山桜桃 えみ

東北育ちの都内OLです。短歌とエッセイ、たまに短編小説。Twitterはこちら→@ewis_0411_note

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引越しました

 noteを見に来てくれた方、ありがとう。  はてブロを開設しました。今後はこちらを更新していく予定です。noteの記事も少しずつ移しています。  アンダーグラウンドな…

山桜桃  えみ
9か月前
7

幸せを願う相手がいること

 友人の結婚式に出席した。これまで、仕事や天候が原因で仲のいい友人達の式にことごとく参加できず、そのうちにコロナ渦になってしまったので、実はこれが初めてだった。…

11

結婚相手にビビッとこない

ね、やっぱりビビッときたの?プロポーズ受けるとき。 婚約してから、何度かそんな質問を受けた。答えはNOだ。特に決定的な決め手があったわけでもなく、それでも他の人と…

33

郵便局はいつもやさしい

郵便局の空気が好きだ。 休日や夜を知らない郵便局の窓口は、昼下がりの街の穏やかさを正しく反映していて、地元の空気を思い出させる。オフィス街にある郵便局はもう少し…

55

余暇と風の匂い

目が覚めたら外は薄ぼんやり明るかった。雨が降っているのかと思えばそうでもないようで、窓を開ければ気持ちよいすずしさの風が部屋に吹き込んできた。 さむいさむいと泣…

24

ワンナイト・ジントニック

キスもセックスもない、文字通りのワンナイト・ラブをしたことがある。 22歳の5月、金沢。空は快晴で、もう初夏と呼べるくらいの暖かさだった。スマホを取り出して、メッ…

59

トラウマのふりした自我に気づいてしまった

地震が起こった時に、心臓がどくどくとして、泣きたい気持ちになる。症状が起こり始めたのは、東日本大地震を経験してから2年が経ち、私が上京してからのことだった。 大…

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あまい卵もわるくないなって思ったんだ

生きているうちにたった一度、あるかないかくらいであろう改元の瞬間を、2人きりで過ごした。本州最北端の県の、ホテルの一室で。 居酒屋でばら焼きを食べながら「平成最…

29

嘘が上手な女の子

沙希は咄嗟に嘘をつくのが上手い。 たとえば、「沙希ちゃんって彼氏いるの?」と誰かに尋ねられた時、「いる」と「いない」以外の答えを何通りも、沙希は持っている。二択…

33

【お礼&募集】31文字のお守り企画について

D'amulette de 31 lettres ~31文字のお守り~ という企画を始めてもうすぐ2か月になります。 仲のいいフォロワーさんに始まり、最近ははじめましての方や、短歌にあまり…

19

虚空へ手を伸ばす

2020年12月21日(月) 冬至 黒板にチョークを走らせる。頭の中で数式を解きながら、手は次の数式を組み立てる。誰もが無言の教室で、彼と私のチョークが黒板に打ちつける音…

21

電話越しに教室を思い出した夜

2020年11月15日(日) 秋晴れ 高校の頃の担任の先生と電話をした。3年連続で担任を受け持ってくれた先生だが、卒業の時に連絡先を聞いていなかったので、地元の友達に番号…

31

喪失を抱えて生きる

2020年11月4日(水) 木枯らし1号、晴れ 職場から家へと向かう電車が物凄い速さで以前の最寄り駅を通過するたび、もうここは私の住む街ではないのだと実感する。人は呆気な…

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【募集】あなたに短歌を贈らせてください

木下龍也さんに詠んでいただいた短歌がうれしかったので、自分でも挑戦してみることにした。 許可をとったわけではないが、そもそも木下さんの短歌も枡野浩一さんの「名前…

29

わたしのための短歌という宝物

たったの31文字。それでも、そこにどんな文字を並べるかでそれは誰かにとって一生の宝物になり得たりする。 木下龍也さんの「あなたのための短歌」を購入した。夜更かしし…

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きみが濡れないように【短歌連作 vol.4】

1本をさして1本を手に持ち きみを迎えに雨降る駅へ 今頃は横浜のあたりだろうか きみが電車に忘れた傘は 「叱らないよ ちゃんと反省してるから」母のことばをふと思い…

16
引越しました

引越しました

 noteを見に来てくれた方、ありがとう。

 はてブロを開設しました。今後はこちらを更新していく予定です。noteの記事も少しずつ移しています。

 アンダーグラウンドなインターネット育ちなので、いいねもPV数も気にしないお部屋が欲しくなって作りました。だから内容はプライベート感強め。思ったことをそのまま吐き出しているので文章構成もめちゃくちゃですが、私の日々の記録として。

 ふと思い出したと

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幸せを願う相手がいること

幸せを願う相手がいること

 友人の結婚式に出席した。これまで、仕事や天候が原因で仲のいい友人達の式にことごとく参加できず、そのうちにコロナ渦になってしまったので、実はこれが初めてだった。

 本当に幸せな時間だった。先月、自身の結婚式を挙げた時にたくさんの人から「素敵な時間をありがとう」と言われて、こちらこそ来てくれてありがとうと思っていたのだけれど、参加する側になってその言葉が心からのものであることを知った。

 大好き

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結婚相手にビビッとこない

結婚相手にビビッとこない

ね、やっぱりビビッときたの?プロポーズ受けるとき。

婚約してから、何度かそんな質問を受けた。答えはNOだ。特に決定的な決め手があったわけでもなく、それでも他の人とこうなる選択肢が過ったわけでもなく、私はそれを承諾した。

異性との付き合いにおいて、「知人・友人のフェーズ」「恋人のフェーズ」「結婚相手のフェーズ」があるとしたら、このうち2つめと3つめの間の壁が厚いのだろうと思う。結婚相手に「ビビッ

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郵便局はいつもやさしい

郵便局はいつもやさしい

郵便局の空気が好きだ。

休日や夜を知らない郵便局の窓口は、昼下がりの街の穏やかさを正しく反映していて、地元の空気を思い出させる。オフィス街にある郵便局はもう少し忙しないかもしれないが、住宅街にあるそこに流れる時間はとてもやさしく、ゆるやかだ。

子どもを抱えて手続きを済ませるお母さん。
通帳を片手にATMの操作方法を教わるおじいさん。

有給をとらないと訪れることのできない限定的な営業時間に、O

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余暇と風の匂い

余暇と風の匂い

目が覚めたら外は薄ぼんやり明るかった。雨が降っているのかと思えばそうでもないようで、窓を開ければ気持ちよいすずしさの風が部屋に吹き込んできた。

さむいさむいと泣きそうになる季節はそろそろ終わりらしい。家に誰もいないのをいいことに、キャミソール一枚でしばらく布団の上で過ごしている。今日の風はなんとなく懐かしいすずしさで、だけど私はこれをうまくことばにすることができない。

教育熱心な家庭で育ったの

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ワンナイト・ジントニック

ワンナイト・ジントニック

キスもセックスもない、文字通りのワンナイト・ラブをしたことがある。

22歳の5月、金沢。空は快晴で、もう初夏と呼べるくらいの暖かさだった。スマホを取り出して、メッセージを打ち込む。

「金沢つきました」

送信先は、かつて恋にも満たない憧れを抱いていた相手。私たちは、8年ぶりに再会を果たそうとしていた。

先生と知り合ったのは、中2の時に通っていた塾だった。大人で(と言っても当時19歳だったの

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トラウマのふりした自我に気づいてしまった

トラウマのふりした自我に気づいてしまった

地震が起こった時に、心臓がどくどくとして、泣きたい気持ちになる。症状が起こり始めたのは、東日本大地震を経験してから2年が経ち、私が上京してからのことだった。

大震災が起こってすぐの頃は、余震が起こっても、周囲が驚くほどに冷静だった。電車に1時間弱閉じ込められた時も、ただ本を読んで時間をつぶしていた。家族への連絡を忘れており、心配した母から後で注意された。友人は余震が怖くてひとりで留守番ができなく

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あまい卵もわるくないなって思ったんだ

あまい卵もわるくないなって思ったんだ

生きているうちにたった一度、あるかないかくらいであろう改元の瞬間を、2人きりで過ごした。本州最北端の県の、ホテルの一室で。

居酒屋でばら焼きを食べながら「平成最後のご飯だね」なんて話した。それから部屋に戻って、テレビをつけて、カウントダウン。まるでお正月みたいだった。

なんとなく、そこに私の家族がいないことに違和感を覚えた。家族以外の人と年を越したことがないからかもしれない。人生の大事な瞬間は

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嘘が上手な女の子

嘘が上手な女の子

沙希は咄嗟に嘘をつくのが上手い。

たとえば、「沙希ちゃんって彼氏いるの?」と誰かに尋ねられた時、「いる」と「いない」以外の答えを何通りも、沙希は持っている。二択の答えしか持たず、それも真実しか言えない馬鹿正直な僕とは正反対だ。そう僕が言えば「嘘をつけないのが紘のいいところだよ」と沙希は笑った。けれど今にして思えば、それも彼女の得意な咄嗟の嘘だったのかもしれない。

沙希は僕の世界から、たびたびい

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【お礼&募集】31文字のお守り企画について

【お礼&募集】31文字のお守り企画について

D'amulette de 31 lettres ~31文字のお守り~ という企画を始めてもうすぐ2か月になります。
仲のいいフォロワーさんに始まり、最近ははじめましての方や、短歌にあまり触れることのない友人からも依頼のご連絡をいただくようになり、うれしい限りです。今は12人目の依頼者の方へのお守りを考えています。

今日はそんな企画を進める中で感じたことを忘れないように、記しておこうと思います。

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虚空へ手を伸ばす

虚空へ手を伸ばす

2020年12月21日(月) 冬至

黒板にチョークを走らせる。頭の中で数式を解きながら、手は次の数式を組み立てる。誰もが無言の教室で、彼と私のチョークが黒板に打ちつける音だけが響いている。刹那、彼が声を上げた。

「あ、こういうことか!」

え、待ってよ。私まだ理解できてない。手は止まり、私は必死で最後に書き出した数式とにらめっこする。ああもう。早く。悔しい、悔しい、悔しい!

そこで目が覚め

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電話越しに教室を思い出した夜

2020年11月15日(日) 秋晴れ

高校の頃の担任の先生と電話をした。3年連続で担任を受け持ってくれた先生だが、卒業の時に連絡先を聞いていなかったので、地元の友達に番号を教えてもらった。声を聞くのは4年ぶりだった。

「久しぶり。東京も大変でしょう」

互いの近況を軽く話し、「きっとこの先ウィルスがなくなることはないから、どう付き合っていくかを考えないといけないんでしょうね」と話した。先生は「

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喪失を抱えて生きる

喪失を抱えて生きる

2020年11月4日(水) 木枯らし1号、晴れ

職場から家へと向かう電車が物凄い速さで以前の最寄り駅を通過するたび、もうここは私の住む街ではないのだと実感する。人は呆気なく街を裏切り、街もまた呆気なく人を忘れる。1日でも練習をさぼると指は動いてくれなくなるのよ、とかつてピアノの先生が言っていたことを思い出した。

捨ててきたものの多い人生だったように思う。

人より不器用な私は人より長く、多く練

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【募集】あなたに短歌を贈らせてください

【募集】あなたに短歌を贈らせてください

木下龍也さんに詠んでいただいた短歌がうれしかったので、自分でも挑戦してみることにした。

許可をとったわけではないが、そもそも木下さんの短歌も枡野浩一さんの「名前短歌」を参考にしたものらしい。というわけで、枡野さん、木下さん、参考にさせていただきます。

とはいえ私はまだまだ素人なので、売るわけではありません。自分のスキルアップのためにも、「プレゼントさせていただく」というかたちをとりたいと思って

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わたしのための短歌という宝物

わたしのための短歌という宝物

たったの31文字。それでも、そこにどんな文字を並べるかでそれは誰かにとって一生の宝物になり得たりする。

木下龍也さんの「あなたのための短歌」を購入した。夜更かししていたらたまたま販売開始のツイートを見かけ、それでも決して安くはない値段に購入を迷っていたところ、「残り1点」という表示が出てきてえいっと勢いで購入してしまった。エピソードを送るとそれについて詠んでくれるというので、何について詠んでもら

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きみが濡れないように【短歌連作 vol.4】

きみが濡れないように【短歌連作 vol.4】



1本をさして1本を手に持ち きみを迎えに雨降る駅へ

今頃は横浜のあたりだろうか きみが電車に忘れた傘は

「叱らないよ ちゃんと反省してるから」母のことばをふと思い出す

ねえ、そんな落ち込まなくて大丈夫 また同じ傘買ってあげるね

週末は2人で買い物に行こう 来週きみが濡れないように

・・・

私の実家は教育熱心な家庭でしたが、成績が思うように振るわなかったとき、母は決して私を叱りません

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