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エセーの試み(1)――人文書院note企画「批評の座標」岡田基生氏の回とその他諸々
先日、大学院生の時(哲学)の指導教員だった板橋勇仁氏と約3年ぶりにメールのやりとりをした。
とはいえ、その間に大学での哲学会の大会でお話しする機会はあった。ただ、私のほうからやや距離を取りつつの会話に終始した。何かまた妙なことに巻き込まれると思えたからである。今回のやりとりは幾つか質問したいことが出てきたことによる。
まず初めに、昨年末(12月)に開催された大学の哲学会の大会について触れた。
新年の抱負(2024年)
明けましておめでとうございます。
昨年、「新年の抱負」と題する文章で以下の三つの目標を掲げた。
なぜこのような目標を掲げたかについて、ここではくどくど説明するつもりはないが、残念なことに、いずれも達成することができなかった。よって、今年もこの三つの目標を継続する。これらの目標についての説明は、昨年に書いた「新年の抱負」と題する文章を参照されたい。
①について、昨年は、身体の調子を考慮に
文学フリマ東京37へ行ってきた
去る11月11日、文学フリマ東京37が開催された。会場は従来通り東京流通センターであった。数日前までの季節外れの暑さはどこへやら、この日は一日中冷え込んだ。
その翌日からは師走並みの寒さが続き、急激な気温変化に身体がついていけない。それはさておき、この日は運が悪いことに、詳細は控えるが都内での別の用事と重なってしまい、1時間半ほどの滞在となった。
朝が苦手な私は前回、入場開始時刻から1時間半
情況についての発言(8)――会長交代から受信料大幅値下げまでのNHKについての雑感
NHKの過去最大の受信料値下げ(10月)が目前に迫っている。これは視聴者にとって大変喜ばしいことであるが、私は依然もやもやとしたままでいる。なぜかと言えば、今回の受信料の大幅な値下げが実現したとしても、それによってコンテンツの質と量が改善どころか維持できるとはとても思えないからである。
前回の「情況についての発言」において、NHKの会長が前田晃伸氏から稲葉延雄氏へと交代したことについて言及した
Threadsを始めました
今月の初めに私はMetaが開発したThreadsのアカウントを作成した。
実業家のイーロン・マスクによる買収(昨年10月28日)以降、Twitterでは大きな混乱が相次いでいる。当初は、従業員の大量解雇や以前に凍結されていた一部ユーザーのアカウントの凍結解除やデマと誹謗中傷の急増や理由不明のアカウント凍結等々が報じられ、その度に多くのユーザーが他社のプラットフォームへの移行を試みることとなった
note初投稿から2年
note初投稿から2年が経った。私はネットメディアを無条件に肯定する立場にないが、物を書く場に限りのあった私にとって、noteは非常にありがたい表現の場である。これは初投稿から1年が経った昨年に書いたことであるが、今でもそのことに変わりはない。
初投稿から1年の時点では、試行錯誤の連続であった。どう書けば多くのビュー数を獲得でき高評価を得られるか、どのような題材で書けば同じくビュー数や高評価が
文学フリマ東京36へ行ってきた
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけがいわゆる2類相当から5類へと移行となってから約2週間後の5月21日に従来通り東京流通センターにて文学フリマ36が開催された。前回の雨天とは打って変わって、一日中晴れ渡っていた。
私が会場に到着したのは13時30分頃であった。入場開始時刻から1時間半が経っていた。単純に朝が苦手なだけである。入場開始時刻から1時間半が経っていたことから、お目当ての同
大江健三郎氏の死を悼む
今年3月13日、大江健三郎氏が老衰のため死去したと報じられた。報道によれば、3日に死去したとのことであるが、3月11日という日付を考慮に入れたのかどうかはわからないが、とにかく10日後の公表ということになった。
この一面識もない文学者の死をなぜ悼むのかと思われるかも知れないが、大江氏は私に多大な影響を与えた文学者の一人であった。実のところ、私が大江氏の作品を本格的に読み始めたのは史学科の学生の
情況についての発言(7)――NHK新会長とCLPについて
NHKとCLPについて、またかと思われるかも知れないが、最近思ったことを書き記す。今回が最後になることを願うばかりである。
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今年1月25日にNHK会長が交代した。新たに就任したのは日本銀行元理事でリコー経済社会研究所参与の稲葉延雄氏で、これで6代にわたって経済界からの登用が続くこととなった。前回の「情況についての発言」で、新会長は「現行の改革路線を踏襲するものと思われる」と書いたが、
情況についての発言(6)――NHK字幕問題とCLP問題、その後
半年以上前の「情況についての発言(4)――メディアと権力との距離」(以下「情況(4)」と記載)で言及したことであるが、今年は新年早々にメディアと権力との距離が問われる出来事が相次いだ。特に私はNHK字幕問題とCLP問題のその後の動向について気になっていたのであるが、ここ最近になって両者ともに大きな動きがあったようである。これからそれらの動向についての私の見解をここにおいて述べていきたい。
【書評】E・H・カー『歴史とは何か』(清水幾太郎訳)
今年、E・H・カー(1892-1982)の『歴史とは何か』(原著は1961年)の新訳が刊行されて話題となっている。60年振りの新訳とのことであるが、筆者はまだその新訳のほうを読んでいない。とはいえ、筆者はかつて歴史学を専攻していた学生であり、新訳の刊行を機に、60年前に刊行された岩波新書版(清水幾太郎訳)のほうを思い出し、手に取り再読し、歴史研究にまつわる事柄をあれこれと考えることとなった。
情況についての発言(5)――文芸批評の現状
ここ近年、文芸批評への風当たりが強いとよく聞かれる。もちろん、それは範囲を広げて、批評一般にも当てはまることであるが、批評一般への悪評としてよく耳にするのが、「批評は嫌われる」、「批評界隈のジェンダー・ギャップ指数が悪い」、「批評家は作家の意図等々を無視する」といったものであるように思われる。
「批評は嫌われる」とはどういうことか? これは、二通り考えられる。一つは、読者からのものであり、もう