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詩集 第5部

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【詩】信仰心

【詩】信仰心

ピッピッピ
きらきら ひかる
とがった花

パッパッパ
まんまる おおきく
ひやけた顔

シャリシャリシャ
ざらざら すれる
みどりのりぼん

サンサンサン
ほこほこ いっぱい
陽をめぐる

【詩】期限切れ

【詩】期限切れ

貸したものは 返ってこなかった
それに気づかず
毎日をすごした 自分がいた
「返してくれ」と
お前にいっても
「なんのことかね」と
しらをきる
私はお前を信用しない
それが二年 それが二年

お前はある日
「貸してくれ」と
いったかな 夏の夜
「貸したくないお前には」
そしたらお前は
物にあたる 物にあたる
駄々をこねて みっともない
お前の行いが 今になって
返ってきたのだよ

【詩】東北の風

【詩】東北の風

さむい さむい
雨がふるまえの
曇天は
さむくて さむくて
頭がいたい

さむい さむい
雨がふるまえの
曇天は
さむくて さむくて
身体があつい

さむい さむい
夏まっただなかの
曇天は
さむくて さむくて
東北の風

【詩】歩行者Aの物語

【詩】歩行者Aの物語

物語の主人公になりたかった
舞台の真ん中に 仁王立ち
スポットライトは 君の心

物語の悪役になりたかった
舞台の真ん中に 一人ぼっち
袖の暗闇は 君の心

ぼくは何者でもない
ぼくは何者でもない
ぼくは何者でもない

きれいな台詞も
くるしい台詞も
口はないから

ながれ星より不鮮明に
はしからはしへ 消えてゆく
それが ぼく

戦う主人公を
倒れる悪役を
うしろ姿の逆行を みていた

物語の誰

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【詩】星ぼしの寝物語

【詩】星ぼしの寝物語

夜中に目覚めて
こわくなって また
目をつむった
あるはずの世界が
まっくらやみ

ふと思い出した
ずうっと昔に読んだ
星空の絵本
まっくらやみに
きらきら星

目をあけて
まっくらやみをみた
ぐんぐん空は さがってくる
でも その向こうに
きらきら星

ああ あの オリオンは
まだ まだ 夜中を冒険している
ああ あの 白鳥は
まだ まだ 湖に降り立てない
星ぼしは 悲しい物語の 詰めあわせ

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【詩】Dear

【詩】Dear

ぼくらの恋は
不純だって
しょうがない しょうがない
夏のおわりに出会ったから
大人の心が
枯れていったんだ きっと

同じ手をつなぐことも
同じ目をあわせることも
同じ空気をすうことも
同じ時代を生きることも
同じ君に恋することも
ゆるされないのかな

この時代は
ぼくらより不純だ

君はだめだというのに
ぼくに一言告げたね
「遠くへ行くんだ」って
最初で最後にしめした
君からの愛情
頬に滲んだ

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【詩】空はきみ

【詩】空はきみ

人はいつまでも
生まれたときから
死ぬときまで
幼子の心をもっている

駄々をこねるのは
昔から今日まで
変わらない
そして泣くことも

一つちがうこと
それは
我慢すること
夢をみること

たくさん泣いた
悔しくて 悲しくて
嬉しくて 温かくて
雨より ふかく ふかく

たくさん描いた
楽しくて 喜ばしくて
知らなくて 弱くて
虹より ながく ながく

今は
雨より あさく
虹より みじかく

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【詩】青い夏

【詩】青い夏

青い夏
青い海
青い空
青い花
それは朝顔

青い船
青い鳥
青い夜
青い星
それは花火

青い音
青い光
青い風
青い葉
それはきみ

夏は力強い青
悲しくなんてないや
夏は力強い青
悲しくなんてないや

【詩】硝子コップ

【詩】硝子コップ

小さな硝子コップに
ゆらめいている
とうめいな水
その向こうはゆがんで
なにがあるのかわからない

風もないので
船はすべらず
人工物なので
生き物は暮らさず
ふつふつと
コップは悲しく泡を浮かばせ

私はぬるまったコップを
肌でかんじ
かさついた唇で
すすすっとのみほす
コップの向こうは
失ったあの日の私が映っていた

【詩】はやおきこおろぎ

【詩】はやおきこおろぎ

夏の夜に
くさむらのかげで
こおろぎが
コロリン リコロン
カリン ポリン
ひとりさみしく 作詞する

夏の夜に
くさむらのかげで
こおろぎが
ポロロン クルルン
プルン コロン
ひとりさみしく 歌うたう

秋の朝
兄弟たちが
キロン ツルン
だれも あの
こおろぎのことは
しらないない
しらないないで
歌うたう

【詩】十代のころ

【詩】十代のころ

私の心が霧になったのは
十三のころ
祖父の死で
鉄砲で撃たれたかのように
穴があき
冷風がふいた

私の心が霧になったのは
十五のころ
愛犬の死で
丸太で突き刺されたかのように
穴があき
春風が走った

私の心が霧になったのは
十六のころ
絵画の死で
散弾銃で削られたかのように
穴があき
木枯しが苦しかった

私の心が晴れたのは
十八のころ
心の死で
銃で撃つ肉もないくらいに
からっぽで
やませが

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【詩】返還

【詩】返還

花が枯れてしまうから
水をあげましょう
床が汚いから
お掃除しましょう
人が困っているから
助けてあげましょう
これは
優しさの裏目の行動です

正しい行いをして
正しい心をもちて
にこやかに暮らしてきました
でも
いつからか
優しさは干ばつして
地割れがおきて
溜め息ばかりつくように
水がほしくて懇願しても
涙は目のふちにこぼれ落ちるだけで
消滅してゆく

優しい行いをしたのに
あの人からも

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【詩】盆始め

【詩】盆始め

海をみると
帰っていった 人々を思いだす
地平線の
手のとどくところへ
陽炎の人々が
鏡のように 後ろ姿で
後世を語っていた
海は広大で 灯火のごとく
小さな昼の 星々を吸収した