幻ノ月音

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主に文章を載せていきます。読書会、掌編、エッセイ、本や映画のレビューなど、つれづれゆくままに。 https://amonkoshaku0.booth.pm/

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    掌編小説と詩。ビターテイストなものが多いです。日常の中にある小さな光を大切にしたい。 https://amonkoshaku0.booth.pm/

記事一覧

映画「 碁盤斬り 」 感想

※物語に触れているため、未鑑賞の方はネタバレにご注意下さい。  映画「碁盤斬り」 __ 思っていた以上に囲碁侍だった。  まず初めに、音尾さん疑ってすみませんで…

幻ノ月音
2日前
4

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

 「黙って喋って」 ヒコロヒー ※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください  思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現…

幻ノ月音
7日前
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映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」感想

映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)」  __ 戦禍を思う __  史実を元にした物語とは言われていないけれど、実際こういう子供たちを匿ってい…

幻ノ月音
2週間前
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第15回読書会報告書

 2024年4月29日(月・祝)14:00〜15:00、第15回目の読書会が開催されました。  課題本は 若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」です。 第54回文藝賞、第158回芥川賞受…

幻ノ月音
3週間前
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神保町のPASSAGEへ

 神保町にある共同書店PASSAGEと三階のbis、そして近隣にあるSOLIDAへ行ってきました。  著名人から一般の本好きまで幅広い人たちが各々の売りたい本、推したい本を棚に…

幻ノ月音
3週間前
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ご紹介いただきました!文学イベント東京に委託で参加予定です。よろしくお願いします。
参加サークル:名も無き堂|文学イベント東京(スモール) @agL9HKKaqfnKkV0 #note https://note.com/heywood/n/n76f5fc6bc343

幻ノ月音
4週間前
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掌編 詩「手は口ほどにものを言う」

手を繋ぎたいと言ったら、手を振りはらわれた 手を貸そうかと言えば、手出し無用と断られ 手を尽くすように僕は、手短に、手心を加えようとする それでも彼女は手酷く僕を…

幻ノ月音
4週間前
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武者小路実篤記念館さんからグッズを通販しました

幻ノ月音
1か月前
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「My bookshelf〜時を探して〜」

「 My bookshelf 〜時を探して〜 」  X(旧twitter)のWeb企画、ペーパーウェル11(2023年9/30開催)の参加作品です。テーマは『 時計・時間 』でした。概要はこちら、  私…

幻ノ月音
1か月前
5

「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想

 「裁判官三淵嘉子の生涯」 伊多波 碧  朝ドラ『虎に翼』が好きで拝読しました。  女性の自立を阻むのは同じ女性だったりもする、という嘉子の言葉に頷いてしまう。…

幻ノ月音
1か月前
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第15回読書会開催のお知らせ

幻ノ月音
1か月前
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チネ・ラヴィータよ、さようなら

 仙台駅東口側から5分もかからないところにある映画館が閉館してしまった。  私はまさかこんなに立地の良い映画館が閉まってしまうなんてつゆ程も思ってはいなかった。…

幻ノ月音
1か月前
4

読書会について

 新生活はなにも春からとは限りません。夏でも秋でも冬でも、やりたいと思ったそのときがタイミングです。その中の一つに、好きなことを追求して趣味を発掘する人も多いか…

幻ノ月音
1か月前
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映画「コットンテール」感想

 今回はリリーさんの哀愁漂う姿に惹きつけられました。無骨で自分本位で、どうにか妻の願いを叶えようと息子に不器用な態度をとってしまう姿がもどかしくてたまらなかった…

幻ノ月音
1か月前
9

「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想

「ぼくは青くて透明で」 窪美澄  とてもよかったぁ。海くんと忍くんの関係だけでなく、海くんの継母や父親、同級生の視点などを、一話ずつ重ねながら進む物語は、多面…

幻ノ月音
1か月前
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掌編小説 「若人へ」

 今日は散々な日だった。  電車で高齢者に席を譲ったら、怪訝な顔で断られ、スーパーで店員さんを呼んだら無表情な顔で指示された。独身だというと可哀想な目で見られる…

幻ノ月音
1か月前
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映画「 碁盤斬り 」 感想

映画「 碁盤斬り 」 感想

※物語に触れているため、未鑑賞の方はネタバレにご注意下さい。

 映画「碁盤斬り」

__ 思っていた以上に囲碁侍だった。

 まず初めに、音尾さん疑ってすみませんでした。
 白石監督作品は凪待ち以来二作品目。お金の紛失事件をきっかけに、あの人が怪しいとかあの人は裏切りそうだとか、いろいろ勘繰ってしまって格之進様に一刀浴びるべきだったのは自分だった。時代劇は剣戟も好きだけど、やはりドラマ部分がしっ

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「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想


 「黙って喋って」 ヒコロヒー

※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください

 思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現方法が面白く、この感じ、結構好きだなと思った。短い物語のなかで、よくある身近な話題から二人にしかわかりあえない微妙なニュアンスの部分まで、男女の繊細な機敏をわかりやすく、また文章も読みやすい。それが、人気の理由なのかもしれません。
 最

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映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」感想

映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」感想

映画「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)」

 __ 戦禍を思う __

 史実を元にした物語とは言われていないけれど、実際こういう子供たちを匿っていた家族は結構いたんだと思う。願うだけでは好転しないとわかっているのに願わずにはいられなくて、隣人であったポーランド人とユダヤ人の子供たちを一身に育て匿っていたウクライナ人の母と父の優しさ、そして逞しさに揺さぶられた。
 ホロコースト

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第15回読書会報告書

第15回読書会報告書

 2024年4月29日(月・祝)14:00〜15:00、第15回目の読書会が開催されました。
 課題本は 若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」です。 第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞作品。本作は2020年に田中裕子さん主演で映画化もされています。

 若竹千佐子さん「おらおらでひとりいぐも」

※ネタバレを含みますので未読の方はお気をつけください。

 4月下旬、曇が多く涼しい風がほどよ

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神保町のPASSAGEへ

神保町のPASSAGEへ

 神保町にある共同書店PASSAGEと三階のbis、そして近隣にあるSOLIDAへ行ってきました。
 著名人から一般の本好きまで幅広い人たちが各々の売りたい本、推したい本を棚に並べて置いてあるこの本屋さんは、部屋いっぱいに本が陳列されていて、本棚の中身は一貫性がなく分類や大きさもバラバラ、だからこそ新しい出会いを予感させるのかワクワクする気持ちが湧いてきて、それが楽しくて仕方がない。前から気になっ

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ご紹介いただきました!文学イベント東京に委託で参加予定です。よろしくお願いします。
参加サークル:名も無き堂|文学イベント東京(スモール) @agL9HKKaqfnKkV0 #note https://note.com/heywood/n/n76f5fc6bc343

掌編 詩「手は口ほどにものを言う」

掌編 詩「手は口ほどにものを言う」

手を繋ぎたいと言ったら、手を振りはらわれた
手を貸そうかと言えば、手出し無用と断られ
手を尽くすように僕は、手短に、手心を加えようとする
それでも彼女は手酷く僕を袖にして、手のひらを返すばかり
どうやっても僕たちは手違いになる
彼女に、手前味噌ばかりで手の内が見えない
手遅れなのだと言われた
彼女を手放したくなくて、僕が思わず手を掴むと
首をしめないでと言われる
怖いこと言わないでくれよ、手首じゃ

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「My bookshelf〜時を探して〜」

「My bookshelf〜時を探して〜」

「 My bookshelf 〜時を探して〜 」

 X(旧twitter)のWeb企画、ペーパーウェル11(2023年9/30開催)の参加作品です。テーマは『 時計・時間 』でした。概要はこちら、

 私は作品の配信と読者の両方で楽しませて頂いております。いつもは物語の短編で参加していたのですが、11回では趣きを変えて時計や時間に関する本を紹介しました。読書の薦めのような、書評のような、推し本語

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「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想

「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想


 「裁判官三淵嘉子の生涯」 伊多波 碧

 朝ドラ『虎に翼』が好きで拝読しました。

 女性の自立を阻むのは同じ女性だったりもする、という嘉子の言葉に頷いてしまう。日頃から常々思ってたことだったので嘉子が体験する疑問をリアルに感じました。彼女の生き方と後生への偉業は尊敬するし、少年達との対話は涙を耐えることができなかった。
 一冊分の生涯なので、本当はまだまだたくさんの困難があったんだろうなぁと

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チネ・ラヴィータよ、さようなら

チネ・ラヴィータよ、さようなら

 仙台駅東口側から5分もかからないところにある映画館が閉館してしまった。
 私はまさかこんなに立地の良い映画館が閉まってしまうなんてつゆ程も思ってはいなかった。チネ・ラヴィータ公式X(旧twitter)での投稿で「閉館します」というお知らせに、スマホを落としそうになりながら「えっ…!?」と声を上げてしまった。ショックだった。

 私が通う限り、客入りも少なくなかったと思うのだが、コロナ禍の影響や昨

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読書会について

読書会について

 新生活はなにも春からとは限りません。夏でも秋でも冬でも、やりたいと思ったそのときがタイミングです。その中の一つに、好きなことを追求して趣味を発掘する人も多いかと思います。一人で黙々とやる趣味もあれば、大勢で和気あいあいとやる趣味もありますが、私はその両方を兼ねたものをお薦めいたします。それは、【 読書 】です。家で黙々と、じゃないの?と思われるかもしれませんが、読書は読み手をいろんなところへ連れ

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映画「コットンテール」感想

映画「コットンテール」感想

 今回はリリーさんの哀愁漂う姿に惹きつけられました。無骨で自分本位で、どうにか妻の願いを叶えようと息子に不器用な態度をとってしまう姿がもどかしくてたまらなかった。「一生のお願い」よりも「最期のお願い」という言葉がなによりも執拗な行動をさせた原因になってしまったのでしょうね。
 夫婦や家族がいれば、誰もが経験する大切な人との病気と別離。妻に対する優しい言葉遣いや労る介護が、苦しくて切ない。うまく対応

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「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想

「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想


「ぼくは青くて透明で」 窪美澄

 とてもよかったぁ。海くんと忍くんの関係だけでなく、海くんの継母や父親、同級生の視点などを、一話ずつ重ねながら進む物語は、多面的で一方の思い込みを柔らかく解いていく。
 文章ってきっと相性があるんだと思う。どんなに読みやすい文体でも読みづらく感じることはあるし、逆に難しそうでもすんなり頭に入っていって、スラスラ読めることもある。窪美澄さんの作品は、とても読みやす

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掌編小説 「若人へ」

掌編小説 「若人へ」

 今日は散々な日だった。
 電車で高齢者に席を譲ったら、怪訝な顔で断られ、スーパーで店員さんを呼んだら無表情な顔で指示された。独身だというと可哀想な目で見られるし、一人でいると男が猫なでな声で寄ってくる。
 荷物が重い、歩き疲れて足が痛い。体が弱い親のために、買い物はずっと私がしている。ヤングケアラーという言葉を知ったのは最近だ。切れやすく、感情のまま暴れ、ひとの話を全くきかない。介護や認知症の身

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