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modern poetry

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冷え性 Sensitivity to cold

冷え性 Sensitivity to cold

人間に温もりがあることは生きるうえでの唯一の掬いだと思う。性愛に興味は無いけれど他人に触れて体温があることを確認するとなんだか生きてる心地がしない?人が肌を触れ合う行為には思考が介在しない何か意味のあるものが隠されているような気がする。

温もりを感じることは傷つけられることに似てる。あなたの手の冷たさがわたしを傷つける。

残酷なのよ。だって、たとえ感情が機能しなくなったとしてもあなたの手が冷え

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信じれば掬われる。

信じれば掬われる。

嗚呼、意識が朦朧として、起き上がることができない。

ドロドロした朱殷色の生温い液体が、地面のタイルを欲望の渦に誘い込む。青いレースのワンピースを着た彼女が真っ黒に、染め上がっていく。

『ワタシは喧噪の中に唯佇んでゐる。
ワタシには分らぬ言語を発し、ワタシには分らぬ感情を表現してゐるのが聞こゆる。』

ーーーそのとき誰かが、彼女の手首に付いているリボンを解いて奪っていった。

ほつれた紐を引いて

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女の子になりたかった。

女の子になりたかった。

男の子だとか、女の子だとか、ゲイだとか、レズビアンだとか、

みんな
他人に名前を付けられたがっている

みんな
自分1人じゃ、自分に名前を付けられなくて
自分1人じゃ、生きていけなくて

だれとだれがおなじだなんて
だれとだれがちがうだなんて

そんなに大事なことなの

わたしの傍にはいつも、必ず女の子がいる
傍に女の子がいると、わたしは安心できる

でも、もう1人のわたしがこう言うの

んん、

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Gravity.

Gravity.

生きることと、死ぬこと。
それは、地球と月が引力で引っ張られているみたいに今にもはち切れそうな糸で、繋がっている。

それはまるで、1度落ちたら落ち続けるしかないような、底のない真っ黒闇の上で綱渡りをしているみたい。

こわいのか、こわくないのか。
わたしにはよくわからないけれどそれは、
デパートに出かけて、下階を見下ろしてるような感覚とおんなじ。そこに待っているのはHappyな恐怖と、Brigh

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無口な彼女。

無口な彼女。

自分と合わないものを排除する。安心を築く。それをできるだけ壊さないように排除し傷つけあう。そして壊れる、排除されたものたちは、違う誰かを排除して安心を築いて壊さないように生きていく。

こんなふうに人生なんて、大小の異なった同じことの繰り返しで、わたしがこの世界で安定を願う度に、違う誰かはこの世界の崩壊を願っている。自分の考えていることの、何もかもが机上の空論に見えて、わたしに愛する人を守る力なん

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抱きしめて

抱きしめて

きみは私が触れた途端ポロポロと崩れてしまいそうなくらいに、そうきっと、脆いんじゃないかな。

ぎゅっと抱きしめてみたいけれど、きみはきっと私の体温で、火傷しちゃいそうじゃない?

きみのもつ脆さ。それはきっと、この世界で生きて、死んでいくことへの怖さ。

きみのもつ灰褐色の目は、この世界の理を見通して、霞みがかっているように見える。

ほら、その証拠にわたしを抱きしめるきみの身体は、こんなにも震え

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Anna.

Anna.

私が見ている此の夜の海は、孤独色した真っ黒な夜空を溶かしたみたいに、冷たくて壮大だ。

誰かの悲鳴と沈痛が目一杯に詰めこまれた
『黒 くろ Black』と書かれた絵の具のチューブを、

他の色が混ざらないように、優しく、ゆっくりと絞り出してゆく。それは空明に吸い込まれては、哀しく生滅する。

ねぇ、アンナ。

私たちは死んだら、このまま消滅して、記憶を失くしたまま新しい誰かになっていくのかしら。

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断りきれない。ああ、貉。

断りきれない。ああ、貉。

「影は、私を掬ってくれる?」

自分の身体が恐ろしいほど強烈な浮遊感に襲われているような感覚に、身震いした。

腕にも力が入らない。頭は、頭痛とは違った"違和感"に悩まされ、わたしは奇妙さを覚える。

痛くはない。

ただ頭にある"核"みたいなものが、自分の身体の外へ放り出され、ひとりでに動いているような、そんな感覚だ。

わたしは次第に生きている心地さえしなくなり、街を有象無象に駆けゆく人々は、

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Intangible Sense.

Intangible Sense.

「ねえ。触れられないものに、触れたくなるときってない?」

と、微かに滲んだ目をした君が、虚ろにこちらを向いて、そう呟く。

「わからなくもないな。」
「でしょ。」

はっきりいって、ぼくには彼女の言ったことは何も分かっていない。でも、なんとか自分の頭にある言葉の糸を、一つひとつ、絡みとってみた。

「うん。例えば、ぼくは女の子の気持ちがよく分かるし、そのままそっくりに演じることだってできる。でも

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Madness.

Madness.

頭がはち切れそうに痛い。

頭が痛いと、大好きなものだって、この世の不条理だって、どうでもよくなってしまう。

好きな小説を並べて読んでいても、なにも面白くない。ただ無造作に並べられた文字の羅列を見ているみたいで、言葉は入ってくるけれど、自分の感覚の実態として、全く現れてこないの。

破った。やぶった。ヤブッタ。

B5サイズの真っ白い紙の四角の隅を、押しピンで1つずつ、ぐっ、ぐっ、と押し込むよう

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ひとつなぎ

ひとつなぎ

悪い出来事は、まるで何かのトリガーをふと引いてしまったみたいに、短期間に、繰り返し、集中して起こってしまう。

そしてなんとなくだけど、わたしはそういう悪い出来事が起こる予感を、肌で感じ取り、察知することができるようになった。

ううん。なってしまった、の方が正解。

「だめや。あかん。これは今、なにやっても上手く行かへん。」

わたしは、物事がそんなふうに「ああ、自分の思い通りにならへんのや」と

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STRAY SHEEP

STRAY SHEEP

学校帰りに見える、暮色に包まれた空は、まるで、全人類の希望と憎悪が、一気に、わたし一人に降りかかってくるみたい。

そんな黄昏時の空は、わたしがいかに両義的で、歪な存在であることを、教えてくれているようだ。

わたしは、人の両義性を見つけるのが、、すき。

まるで赤の他人から、罵倒の声を浴びせられたみたいに、わたしの身体の奥底から"得体のしれないなにか"が、ふつふつと煮えたぎって、今にも"バケモ

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