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ライトノベル マークの大冒険 もうひとつの歴史

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イングランド国教会が設立したアカデミーに通うマークは、英国式の蔦這う赤煉瓦造りの美しき校舎でキャンパスライフを送っていた。日本で初めてキュレーター養成過程(博物館・美術館の収蔵品… もっと読む
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記事一覧

マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再臨

マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再臨

13人の男女の足元が突然、轟音を鳴らしながら揺れ出した。すると、地面が勢いよく盛り上がり、柱のように突き出していった。13人の男女は揺れに耐えながら、天へと近づいていく。空には灰色の雲が立ち込め、当たりは急に薄暗くなった。分厚い雲の間から稲妻がところどころに走っている。揺れが収まりしばらくすると、空が閃光を放った。そして、13人の男女の前にフードを被った一人の男が姿を現した。

「師よ!」

弟子

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マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再会

マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再会

現代、エジプトの荒野にて_____。

「ユダ、これはどういうことだ!お前が俺たちをここに?」

荒野に13人の者たちが円を描くように向き合って立っていた。突然の再会と復活にユダ一人を除いては驚きを隠せない様子だった。

「相変わらず荒々しいなペテロ、久しぶりの再会だというのに」

「自分の過ちを考えろ!ユダ、なぜ裏切った!!」

「黙れ、全ては師のお考えだ。もうじき師もここにいらっしゃる。それで

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第5回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第5回

さあ、今回でボクと学ぶローマ帝国史は、第5回目となる。前回はローマ・サビニ戦争の最中に登場したタルペイアというウェスタの巫女のお話だったね。ウェスタの巫女はローマではかなり優遇された身分で、劇場の最前列の席が用意されたり、引退後は年金で生涯生活には困らなかったり、周囲が羨む役職でもあったんだ。ただし、30年間の役職を全うするまでは、交際や結婚は一切許されないという制約もあったのだけれどね。そんな金

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第4回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第4回



さて、今回でボクと共に学ぶローマ帝国史は4回目となる。ローマの歴史はとても長い。だから、ローマの歴史は大きく分けて、王政期、共和政期、帝政期の3つに区分されるが、王政期以前のギリシア神話を含むとさらにボリュームを増す。

そんなわけで、第4回にしてまだ王政期であり、尚且つ初代王ロムルスのエピソードである。この後に6人の王が続き、ローマの王政期は計7人の王によって統治された。最初はローマ人、次は

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第3回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第3回

ローマは如何にして帝国に成り得たのか?その成り立ちを見ていこう。ローマは偉大にして永遠なり。彼らの軌跡と栄光をコインの図像と共に追っていく。

前回までのあらすじ
トロイア王国は、アカイア軍のオデュッセウスが考案した木馬作戦の策略にかかり、一夜にして焼き払われた。だが、トロイアから命辛々脱出した王子アイネイアスは、亡命の末イタリア半島に辿り着いた。イタリアを北上した彼は最終的にラティウムと呼ばれる

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第2回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第2回



さあ、エウボイア島からトロイアへと出港したアカイア軍一向は一体どうなったのだろうか?今回は彼らのその後を見てみよう!

お、今、目の前で何のコインを見てるかって?まあまあ、焦らなくても後で紹介するさ。ローマで発行されたデナリウス銀貨だけど、詳細は後ほど紹介するよ。

🦋🦋🦋

トロイアへと上陸したアカイア軍だったが、トロイアの屈強な城壁を陥落させることができず、制圧に難航していた。両者の

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第1回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第1回



マーク
古代オリエント文明を中心に考古学研究の旅を続けている冒険家。いつか自分も歴史に名を残す大発見をすることを夢見ている。生活はカツカツだけど、期待と夢に溢れた毎日を送っているよ。自由と冒険、そして非日常。それこそが彼が追い求める最高にハッピーな人生だ。

コインの図像を観ながら、古代ローマの歴史を学んでみよう。なぜボクらは歴史を学ばなければならないのか?その理由は人それぞれだが、ボクは先人

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キミがいた場所 | あの古書店での思い出

キミがいた場所 | あの古書店での思い出

英国挿絵画家の世界については、自分が当時足繁く通っていた古書店に勤める英国出身の書店員からの影響が大きい。彼女は長く透き通ったブロンドの髪に、吸い込まれるような澄んだブルーの瞳をした、絵に描いたような美人だった。年齢は分からないが、さほど歳は離れていない気がした。

本棚と睨めっこし、アーサー・ラッカムの書籍を探していた時、彼女が「ラッカムのテイストが好きなら、ヒース・ロビンソンもいかが?あなたな

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キミがいた場所 | あの古書店での後日談

キミがいた場所 | あの古書店での後日談

彼女がいなくなった後も、ボクはあの古書店に通い続けていた。ある時、店主が彼女のことについて話始めた。ボクはそれを流すように聞く振りをしていたが、内心ではとても気になっていた。

「どうしてあの時、何も言わなかったんだ?」

古書店のカウンターで手に取った本を眺めていると、向かい側で腰掛ける店主が唐突に呟いた。

「言わなかったって?」

「そりゃ、言わなくても分かるだろ、お前さん。何かしらアクショ

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マークの大冒険 | 東風 〜始まりの予感〜

マークの大冒険 | 東風 〜始まりの予感〜

早川瞳がボクの写真事務所に現れてから、一週間ほど経った。

ボクは古代コインを専門としているだけに、早川が鞄から出したアレクサンドロス大王のコインを見てひどく驚いた。彼女が持っていたものは、アレクサンドロスのコインの中でもエジプトで発行された特別なタイプのものだった。

通常、彼のコインは獅子の毛皮を被ったデザインで表されるが、象皮を被った珍しいタイプが存在している。彼女は持っていたものは、まさに

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マークの大冒険| ザ・ビフォア・アドベンチャー 『キミがいた季節』

マークの大冒険| ザ・ビフォア・アドベンチャー 『キミがいた季節』

「名前?名前は風秋(ふうき)だよ。秋の風が吹き始める季節に生まれたから風秋。私、自分の名前が好きなんだよね。でも、それって大事なことだと思わない?」

出会って間もない頃に彼女がそう言ったことをよく覚えている。珍しい名前だから印象的だというのもあるけれど、何より自分の名前が好きだと胸を張って言える彼女の姿は輝いていた。そして、時折見せる彼女の笑顔は世界の全てを救えてしまえるような気がするほど綺麗だ

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マークの大冒険 | 東風 〜動き出す歯車〜

マークの大冒険 | 東風 〜動き出す歯車〜

たとえ東の風が吹こうとも、
ボクらの冒険は終わらない。

そこに謎がある限り、
ボクらは前に進み続ける。

ボクらの冒険は、
まだまだ始まったばかりだ。

夢と志を持ち、
風のように駆け抜ける。

毎日が冒険。
毎日が非日常。

ボクらはそんな果てなき旅をする。
動き出した歯車は止まることを知らない。

🍀🍀🍀

午後。女学院にて。

「あの子、自慢とか全然しない子だからあれだけど、成績も結

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マークの大冒険 フランス革命編 | 楽園の先で待つ者

マークの大冒険 フランス革命編 | 楽園の先で待つ者

「マーク、行けるか?」

ホルスは謎の男を前に戦闘体制に入り、マークを横目に見た。

「若いのは血の気が多くて良くないな」

男は好戦的なホルスを見て、呆れた口調で言った。

「若い?笑わせるな。俺の方がずっと古い」

「天空のホルス。九柱神にも入らない、第五世代の新興神。私はキミたちの祖ラーよりも先に存在している。父オシリスは賢王として評判だったが、キミはいつになっても変わらないな。常に怒りにと

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