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企業の人事部門でコミュニケ―ション推進を担当しているアラフィフの男性です。趣味は登山、…

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企業の人事部門でコミュニケ―ション推進を担当しているアラフィフの男性です。趣味は登山、ランニング、バードウォッチング。美しい景色を見ることが好きです。趣味や仕事を通じて感じたことを気の向くままに書き綴ります。

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記事一覧

旅ラン ~歴史街道・琵琶湖から若狭湾へ〜

海が見えた。今回の旅ランの目的地、福井県小浜市に広がる若狭湾だ。琵琶湖の北部から34km。走り続けてきた足取りはすっかり重くなっている。 旅ランとは、旅とランニ…

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10日前
20

50代ランナーの伸びしろ

「あと2km」の標識が見えた。沿道の声援が大きくなる。もう手を振る力は残っておらず、前を向いたまま口角を広げて笑顔をつくった。 ほんの少し前までは早く終わりたい…

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1か月前
56

自分の軸を外さない 〜ランニングとキャリアの共通点〜

いつもの河川敷を走り始めて90分。ようやく20km地点まできた。今のところ4分40秒/kmのペースを維持している。目標のレースペースだ。 今回の30km走で少し…

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2か月前
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海を渡る小さな身体に

ナンキンハゼの白い実がなる枝に小鳥が止まった。11月の中旬、夕暮れ時の柔らかい陽射しを浴びてその小さな身体は淡い金色に染まっている。「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と高い声…

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3か月前
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笑顔のチカラで走る

頭上で大きな声が聞こえた。私の名前が呼ばれている。 「〇〇さん、頑張ってー!」 見上げると歩道橋の上から、赤いマリオの帽子を被った人が私に大きく手を振っている。…

tomo
4か月前
43

未来の稜線

振り返ると、歩いてきた山々が広がっている。 足元の赤い屋根の白馬山荘から、ところどころに雪渓が残る緑の稜線に沿って白い道が延び、山と山をつないでいる。手前は昨日…

tomo
8か月前
70

ダイバーシティとは自分のことだった

「ダイバーシティ(多様性)の推進」、「誰もが個性を発揮してイキイキと活躍できる社会」。日々の生活の中でこのような言葉を目にする機会が増えました。VUCA*と言われる…

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9か月前
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雪の稜線で人生を眺める

雪山を歩くとその雄大な景色に圧倒される。 紺碧の空を背に、白い稜線が太陽の光を浴びて輝く。稜線は目指す場所に向かってうねうねと続いている。一歩づつ進むうちに自分…

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1年前
58

走ることは旅に似ている

明日はどんな旅になるだろう。 不意にそんな言葉が頭に浮かんだのは昨夜のこと。何かわくわくするような気持ち。 フルマラソンの前夜にそんな気分になるのは初めてだ。い…

tomo
1年前
59

理想のチームになるために ~アンコンシャス・バイアスの視点から

一緒に仕事をする人とのコミュニケーションをもっと円滑にして、よりよいチームをつくりたい。自分の組織をもっと理想的なチームにしたい。 企業や団体などの組織で働いて…

tomo
1年前
29

走りながら、ととのえる

「走りながら、治していきましょう」 毎日のランニングの影響で右足のかかとの痛みがひどくなり、整骨院に行った時の先生の言葉です。 それから一ヶ月が過ぎた今、これは…

tomo
1年前
33

思い込みに気づくと社会はよくなる

相手のふとした言葉で自分の思い込みに気づくことがあります。 「年寄り扱いしないで」 夏の日の母の一言も、そんな気づきを与えてくれました。 コロナ禍 2年前、新型…

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1年前
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人生の交差点 涸沢カール

山小屋の売店で缶ビールを買ってテラスのテーブルについた。タブを開けると心地よい音が鳴った。炭酸の刺激が喉を通り過ぎる。私は大きく息を吐いた。 山を見つめる人 5…

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1年前
38

あいつは37km地点にやってきた

あいつはいつも突然やってくる。 足の筋力と思考能力をおとろえさせ、走る意欲をまる切りそいでしまうやつ。 今回は来ないのではないか。ちらりとそんな期待がよぎったの…

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2年前
29

虹の橋からの手紙

僕の名前はぴぴ。 生まれたのは今から5年前。ペットショップの小さな鳥かごで同じセキセイインコの友達と一緒にいたのを覚えています。僕より少し遅く生まれた子が泣いてば…

tomo
2年前
57

山に登ることは意思決定の積み重ねだ

独りで雪山に登るという行為は判断の連続だ。 自然条件、装備、自分の力量と意欲を客観的に眺めてみて、進むのか、引き返すのか、右か左か。次の一歩の意思決定を積み重ね…

tomo
2年前
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旅ラン ~歴史街道・琵琶湖から若狭湾へ〜

旅ラン ~歴史街道・琵琶湖から若狭湾へ〜

海が見えた。今回の旅ランの目的地、福井県小浜市に広がる若狭湾だ。琵琶湖の北部から34km。走り続けてきた足取りはすっかり重くなっている。

旅ランとは、旅とランニングを組み合わせた造語。その土地の雰囲気や景色を楽しみながらランニングすることだ。着替えなど最小限の荷物を背負って、見知らぬ街を自分の足で駆けていく。歴史ある道を走ったり、たどり着いた先で温泉に浸かったり。地のものを食べてビールを飲むのも

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50代ランナーの伸びしろ

50代ランナーの伸びしろ

「あと2km」の標識が見えた。沿道の声援が大きくなる。もう手を振る力は残っておらず、前を向いたまま口角を広げて笑顔をつくった。

ほんの少し前までは早く終わりたいと思っていた。右足の腿裏の筋肉は今にもピキピキと痙攣を始めそうだ。

でも声援は気持ちを高ぶらせてくれる。ゴールは近い。万一足がつっても何とか足を動かせるはずだ。ラストスパートに向けて再び身体を前に傾けた。

ネガティブスプリット

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自分の軸を外さない 〜ランニングとキャリアの共通点〜

自分の軸を外さない 〜ランニングとキャリアの共通点〜

いつもの河川敷を走り始めて90分。ようやく20km地点まできた。今のところ4分40秒/kmのペースを維持している。目標のレースペースだ。

今回の30km走で少し余裕を持って走り終えることができたら、フルマラソンでもこのペースでゴールできるだろう。でも、先ほど中間地点で折り返して感じたのは強い向かい風だ。その時初めて、往路は追い風に背中を押してもらっていたことに気づいた。後半のことを考えて、もう少

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海を渡る小さな身体に

海を渡る小さな身体に

ナンキンハゼの白い実がなる枝に小鳥が止まった。11月の中旬、夕暮れ時の柔らかい陽射しを浴びてその小さな身体は淡い金色に染まっている。「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と高い声で鳴いてしっぽを上げた。

一瞬、カメラ越しに私と目が合った気がする。小鳥はちょいと首をかしげた。その仕草が数年前に亡くなったセキセイインコに似ていてどきっとする。懐かしさを覚えながら何度もシャッターを切った。

冬鳥

冬、大阪府内を京都

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笑顔のチカラで走る

笑顔のチカラで走る

頭上で大きな声が聞こえた。私の名前が呼ばれている。

「〇〇さん、頑張ってー!」

見上げると歩道橋の上から、赤いマリオの帽子を被った人が私に大きく手を振っている。私は右手を挙げた。

スタートして1時間半。18km地点のJR舞子駅を過ぎたあたり。歩道橋の下を一瞬で走り抜けた。声を掛けてくれた人の視線を背中に感じながら、自分はきちんと笑顔を返せただろうかと気になった。

神戸マラソン

2万人が参

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未来の稜線

未来の稜線

振り返ると、歩いてきた山々が広がっている。

足元の赤い屋根の白馬山荘から、ところどころに雪渓が残る緑の稜線に沿って白い道が延び、山と山をつないでいる。手前は昨日歩いた杓子岳と鑓ヶ岳。その次にあるはずの唐松岳は隠れて見えなくなってしまった。

ここは北アルプスの白馬岳。標高2,932mの山頂だ。奥には猫耳の形をした鹿島槍ヶ岳の双耳峰。さらに遠くには北アルプスの盟主、槍ヶ岳から穂高連峰。左に目を移す

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ダイバーシティとは自分のことだった

ダイバーシティとは自分のことだった

「ダイバーシティ(多様性)の推進」、「誰もが個性を発揮してイキイキと活躍できる社会」。日々の生活の中でこのような言葉を目にする機会が増えました。VUCA*と言われる時代、より一層多様性の重要性が高まることは感覚的には分かるという人は多いのではないでしょうか。

でも、それを実現するために何をしたらよいのか。明確に答えを持って行動していると言える人はあまり多くないように思います。「で、どうするの?」

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雪の稜線で人生を眺める

雪の稜線で人生を眺める

雪山を歩くとその雄大な景色に圧倒される。

紺碧の空を背に、白い稜線が太陽の光を浴びて輝く。稜線は目指す場所に向かってうねうねと続いている。一歩づつ進むうちに自分は風景の一部になる。

人生というものを少し遠くから眺めることができたら、こんな感じなのかもしれない。

夜明け前

6:00。12本爪のアイゼン、ピッケル、ヘルメットなど、身につけた装備を確かめてテントを出た。今日の日の出時刻は6:57

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走ることは旅に似ている

走ることは旅に似ている

明日はどんな旅になるだろう。

不意にそんな言葉が頭に浮かんだのは昨夜のこと。何かわくわくするような気持ち。

フルマラソンの前夜にそんな気分になるのは初めてだ。いつもなら複数の不安が心の隙間に入り込んで、そわそわして落ち着かなくなる。

でも昨日は違った。

右足のかかとの痛みはランニングフォームの改善で気にならなくなった。(関連記事:走りながら、ととのえる|tomo|note)

左ひざの内側

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理想のチームになるために ~アンコンシャス・バイアスの視点から

理想のチームになるために ~アンコンシャス・バイアスの視点から

一緒に仕事をする人とのコミュニケーションをもっと円滑にして、よりよいチームをつくりたい。自分の組織をもっと理想的なチームにしたい。

企業や団体などの組織で働いていると、そんな思いを持つことはありませんか?

理想のチームといっても色々な定義がありそうですが、私はこのように考えています。

目的とゴールを共有しているリーダーとメンバーが、多様な意見を集めてよりよい意思決定を行い、トライ&エラーを通

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走りながら、ととのえる

走りながら、ととのえる

「走りながら、治していきましょう」

毎日のランニングの影響で右足のかかとの痛みがひどくなり、整骨院に行った時の先生の言葉です。

それから一ヶ月が過ぎた今、これはなかなか奥の深い言葉だと感じています。

痛い時は休む?

ランナーにとって故障はつきもの。走ることを趣味にしていると、かかと、膝、腰などいつもどこかに痛みやその予兆を抱えているものです。

そんな時に一般的に推奨される対処法があります

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思い込みに気づくと社会はよくなる

思い込みに気づくと社会はよくなる

相手のふとした言葉で自分の思い込みに気づくことがあります。

「年寄り扱いしないで」

夏の日の母の一言も、そんな気づきを与えてくれました。

コロナ禍

2年前、新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言が発出され、それを機に多くの人の日常生活は一変しました。人とリアルに会うことはリスクとなり距離を求められます。オンラインでのコミュニケーションツールが苦手な人ほど孤独や先行きの不安をより強く感じたの

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人生の交差点 涸沢カール

人生の交差点 涸沢カール

山小屋の売店で缶ビールを買ってテラスのテーブルについた。タブを開けると心地よい音が鳴った。炭酸の刺激が喉を通り過ぎる。私は大きく息を吐いた。

山を見つめる人

5月の涸沢。雲一つない青空と、真っ白な雪面。サングラスなしでは目も開けていられないまぶしさだ。

見上げると、登ってきたばかりの山が見える。疲労と高揚感が身体に残っている。今日のうちにテントを片付けて上高地まで下山し帰路につく予定だったが

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あいつは37km地点にやってきた

あいつは37km地点にやってきた

あいつはいつも突然やってくる。
足の筋力と思考能力をおとろえさせ、走る意欲をまる切りそいでしまうやつ。

今回は来ないのではないか。ちらりとそんな期待がよぎったのは30km地点。そこまで順調だったからだ。

「甘かった」と気づいたのは 37km地点だ。

スタート

3月27日(日)。快晴。予報では最高気温は 20℃を上回るらしい。風は少し強めで 4m/秒くらいだが間もなく落ち着くはず。今日のポイ

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虹の橋からの手紙

虹の橋からの手紙

僕の名前はぴぴ。
生まれたのは今から5年前。ペットショップの小さな鳥かごで同じセキセイインコの友達と一緒にいたのを覚えています。僕より少し遅く生まれた子が泣いてばかりいたので、身体を寄せて温めてあげたりしていました。鳥かごはヒーターがついていて暖かいのですが、生まれたばかりの子は「人肌」があるととても気持ちが落ち着くのです。

その頃、毎日のように鳥かごをのぞきに来る女の子と男の子がいました。僕と

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山に登ることは意思決定の積み重ねだ

山に登ることは意思決定の積み重ねだ

独りで雪山に登るという行為は判断の連続だ。

自然条件、装備、自分の力量と意欲を客観的に眺めてみて、進むのか、引き返すのか、右か左か。次の一歩の意思決定を積み重ねていく。

山に登る目的は人それぞれだと思うけれど、自分にとっては「達成感を得る」ことだと思っている。目標は「無事に還ってくること」。達成感は大きい方がよいが、自分の身の丈を越えてリスクテイクすると還ってくることが難しくなる。だから意思決

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