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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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記事一覧

エッセイ 現状

エッセイ 現状

トイレで、久々に見る飛びグモが現れた日の翌日は、「この日から気温が暖かくなる」と予報されていた日で、川沿いを歩けば急に虫たちが飛びだした。

人間がテクノロジーを駆使して知ることを、虫たちはその感覚で知っているのだから、人間の知性のなんたるかを考えてしまう。

この頃は少し忙しかったためか、心身ともに変化があって。
テレビやスマホの画面から出てくる言葉の私の体内への透過性が低くなっている。
胸の細

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エッセイ 貧血

エッセイ 貧血

貧血なのだそう。

なんだか貧血っぽい。とかではなく、血液検査の結果が数値をもってそう示していて、正真正銘の貧血なのである。

そう言われれば、貧血っぽい。

自覚症状は特に無かったし、お医者さんにそう言われた時は首を傾げていたけれど、「貧血だ」と証明されてしまえば、たちまち日常生活に「貧血」が幅を利かせてくる。
そう言えば、立ち上がった時にややふわっとする。なぜか急に気分が悪くなる時がある。動い

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エッセイ 約束

エッセイ 約束

奈良市に「ほんの入り口」というとても好きな本屋さんがある。(そしてとてもお世話になっている。)なにが好きって、もちろん置かれている本も興味深いものがたくさんあるのだけれど、そこで開かれるイベントがなんだかとてもおもしろい。

様々な物事の「入り口」をテーマにしたイベントが催されるのだけれど、先日はそのうちの一つ、「作文の入り口」というイベントに参加した。

そのイベントは、用意されたお題くじを参加

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恐怖心からの脱却

恐怖心からの脱却

奈良市にある本屋「ほんの入り口」さんのイベントがきっかけで知った、奈良の東吉野村にある
人文系私設図書館Lucha Libroさん。

素敵なご夫婦が運営されていて、是非一度行ってみたいところです。
そんなお二人に惹かれ、お二人がされている「オムライスラヂオ」も聴くように。

それをきっかけに、ある私の恐怖心が少し救われました。

備忘録も兼ねて、記しておきます。

私は、政治に関心がある

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映画『正欲』

映画『正欲』

12月の頭に映画『正欲』を観てきました。
その時のことと、考えたことを以下に。

登場人物、延いては世のすべての人を掬い上げよう、その深い深い根を掘り下げ、掘り下げたその先はどこかに繋がる(一致)とか、出口(救い)があるだろうという思いで観ていた。それはさながら地面の至る所を掘り下げる様に。だけどどこにも繋がらなければ辿り着く所も無く、ただただ足下が不安定になっていって、体がぐらつき、私は酔って物

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エッセイ 夢

エッセイ 夢

夢を見た。
私が現在(リアル)の苦しみを「演じて」いる夢。演じているのだから、その苦しみから逃れられるのに、重いオモシを自ら背負って歩く様に、苦しみに喘ぎながらひたすら歩いている。
なぜそこから解放されないのか。
それを夢の中でも自問するのだけれど、答えも出ているのだ。「苦しみを背負っている方が楽だから」。たしかにそれは重くて重くて辛いのだけれど、それを背負っている自分でいる方が、心が楽なのだ。あ

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落ち葉

落ち葉

昨日から、やる気が無い。秋に入り朝が寒くなったせいなのか、自分でもよく分からないけれど、昨日も今日も、何か生きることに対して背を向ける様に、布団にくるまって午前を潰した。
こんなこと、久しぶりだ。

それでも今日は、14時から予定があったため、出かける準備ができるリミットギリギリに、布団から身を剥がし、なんとか外へ出かけた。

出かけてみれば、気持ちの良い秋の好日であった。人と会って、言葉を食べる

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絵画

絵画

突然ふと、太陽が隠れたら
ふと、この道を行く意味を失って
そうして、ぴたっと足を止めたくなる
でもこの世界で足を止めることは
心臓を止めることに似ているから
力が抜けそうな体を
重怠い足を
とりあえず交互に出している

そんな瞬間がふとやってくる
脳が何かを拒んでいる
心が脱力している

この道を行くために
路傍の店で欲を満たす
けれど十分に満たせる程の
対価を持ち合わせていない
明日が遠くなる

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秋の手をとる

秋の手をとる

今年は暑さが長く続くと聞いていた。
だから秋が遠い、もしくは来ないのではと、遠く秋へただ手を伸ばしていた。

しかし9月が近づき始めると、秋の足音がするではないか。空に浮かぶ雲は秋へと流れ、虫の声は移ろい秋を呼んでいる。まだまだ猛暑日と言われるなか、どことなく以前より過ごしやすく感じ、秋の気配へ目を移す。

そして思うのだ。
ごめんね。
ありがとう。

それはまるで、親が子を思う様に似ている。

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平和とは

平和とは

平和とは物質である。

それはあの日の宝物の様に、手にした時は眩く生き生きとした質感をしていて、皆大切に居間の高い位置に飾り置く。
しかし時が過ぎると徐々に埃が膜を張り、光沢も質感もぼやけたそれは、日常の風景に貼り付いてしまう。

そうして、くすんだそれがかつては宝物だったことすら、誰もが忘れかけた時、箪笥の上から落ちて割れてしまうのだ。

それは人間が創った概念であり、理想であり、幻想であるのだ

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カフカ

カフカ

カフカの『審判』
ちびちびと読み始め。

『変身』は駆け抜ける様に読んだ。
読後、ただただ「なんという…。」と呟いて、
衝撃が残った。

だけど、『変身』にしてもこの『審判』を読んでいても、冒頭からずっと奇妙さや違和感、まさしく不条理の渦に包まれているのに、妙に読んでいて居心地が良い。

「水を得た魚」と言っては用法が違うけれど、
自分が昔から息をし続けていた、不条理という海の中に帰してもらった感

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誕生日の空

誕生日の空

先日、とあるイベントに行った。そこで温灸をしてもらったのだけれど、その鍼灸師さんにこんなことを言われた。
「自分に"私は幸せになる"って言うのよ。脳は、それが誰に言われたのかは区別しないの。だから、誰かに言われるのも自分で言うのも変わらないのよ。朝起きたら"私は幸せになる"と言ってみてね。本当に幸せになれる気がしてくるのよ。」と。
なるほど、脳の思考に悩まされている私にとって、この言葉は必要であり

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ある土曜のスケッチ

ある土曜のスケッチ

眠い。今日は土曜日。只今未来を描こうと模索中の私にとって、平日も土曜日も大差無いのだけれど、やはり休日ムードの土曜日。でも何の予定も無く、ただ眠いままぼーっとしている。だから今日という日はただのスケッチだ。記憶に残るように線を太く上書きしたり、思い出になるような色をのせたりしていない、ただのスケッチの日。

それにしても眠い。理由は分かっている。昨晩飲み忘れた薬を、今朝飲んだからだ。眠くなるから眠

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夕空は心を写す

夕空は心を写す

夕空を見た時、人は何を想うのだろうか。
一日を振り返ったり、誰かを想ったり、センチメンタルになったり、様々なのだろう。

私はだいたいいつも、懐かしい風景が想起される。学校の放課後、小さい頃行った野外ライブの空、昭和の夕暮れ、海の向こうの遠い街。
暖色に染められた混じり気のある空気が、同時に鼻の中に入ってきて、心が暖かくなる。息が吸える。

自分でも、どうしてそれが想い出されるのかは分からない。心

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