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【詩】急展開・8 of Wands

【詩】急展開・8 of Wands

ワンドの8には
人物が描かれていない
ただ8本の棒が
矢のように勢いよく
降りかかってくる様子が
画面いっぱいに描かれている

急転直下の
何か大きな動きが起こっている
スピード感
情熱
活力といったことを
感じさせる絵柄だ

8は物質世界と
非物質世界をつなぐ
無限なる力へと
開かれる可能性を秘めている
ワンドという
火を象徴するスートと結びつき
物事が迅速に動き
拡大・発展することを
暗示する

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風が吹かなくても

風が吹かなくても

昨年のものですが、
ねこちゃん描きました((Ф(.. )

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図書館で手元の本に熱中していたときのこと。突然「感染対策のため、消毒と換気を行います」という館内放送が流れ、しばらくして、本棚と本棚のあいだを冷たい風がさあっと吹き抜けていった。図書館で風を感じることってあんまりないような気がするから、風がやってきた方向を見てついにっこり。本

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黄昏に見る

黄昏に見る

 あなたは誰? とつぶやいて 私は誰? と言葉が聞こえる。わからないわ、とささやいて、わからないの、とその繰り返し。

 私が目にしている光景は間違いなく現実に違いないのだろうけれど、私が今ここにいる真実は、本当に現実なのかわからない。

 寂しいとき、楽しいとき、悲しいとき、嬉しいとき、この感情は本物だと思う。私がそう感じている、真実だと。でも、その私は本物? 存在している?

 それは、私では

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ヴァルター・ベンヤミン著作集III「言語と社会」-解釈

ヴァルター・ベンヤミン著作集III「言語と社会」-解釈

ヴァルター・ベンヤミン著作集III「言語と社会」-解釈
解釈-ヴァルター・ベンヤミン著作集III「言語と社会」から、「言語一般および人間の言語 」 1916

「言語一般および人間の言語 」解釈「言語一般および人間の言語 」
人間の精神面の表出は、すべて、言語の一種として把握することができる。
この把握にあたっては、至るところで新たなる問題の提起の道が開かれた。
簡単に言えば、精神面全ての伝達は、

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「意味」を仮設しつつ、未完成のままに -意味分節を生きる

「意味」を仮設しつつ、未完成のままに -意味分節を生きる

奥野克己氏と清水高志氏の共著、『今日のアニミズム』を読んでいる。

『今日のアニミズム』は「アニミズム」の本であり、「人類学」の本であるけれども、その表向きの「分野」や「テーマ」の向こう側に、人類×言語の動的で開放的なハイブリッド・システムに残された可能性の種子を植えるような、凄みのある一冊である。

例えば、次の一節を読んでみよう。

ここで問われていることは「端的に生死でも去来でもあるもの」で

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夜と朝の間で

夜と朝の間で

よく晴れた夏の日は、洗濯物がよく乾く。朝干せば、昼過ぎにはもう乾いている。干す前には確かに湿っていた洗濯物が、取り込む時にはパリッと乾いている。太陽の匂いがするふかふかのタオルやTシャツ。私は思いきりそこに顔をうずめる。ふぅ、最高だ。最高に、不思議だ。一体これらの衣類はいつ乾いたのだろう?

「湿っている」と「乾いている」の間に、はっきりとした境界線はない。湿っていた衣類は照りつける夏の日差しの下

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生命エネルギーを高めてくれる食べ物

生命エネルギーを高めてくれる食べ物

始めに申し上げたいのですが、わたしは栄養士でも管理栄養士でもありません。

ただの健康オタクです。

そんなわたしは、食生活アドバイザーの資格を持ち、過去に食事相談の窓口の仕事や、生活習慣病のレシピコンテストの運営に携わっていたことがありました。

当時は、もちろん仕事なので、決められたルールに従って業務を行っていたわけですが、たくさんの小数点たちが並んだ栄養計算表を毎日見つめながら、わたしの頭の

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松村圭一郎『くらしのアナキズム』

松村圭一郎『くらしのアナキズム』

☆mediopos-2503  2021.9.23

アナキズムは
華厳の世界観に似ている

絶対的な中心をもたず
すべての存在が
他の存在との関係のなかで
みずからの存在を成立させている

アナキズムは無政府主義ではない
そんな政治運動的なものとしてとらえたとき
それはアンチであることで
国家制度をむしろ裏から強化してしまう

どんなアンチも
相手を批判することで
相手を絶対化してしまい
むしろ

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人工知能は新しい芸術を生み出せない、それができるのは「生きている機械」

人工知能は新しい芸術を生み出せない、それができるのは「生きている機械」

人工知能がどれだけ進歩しても新しい芸術を生み出すことはできない。

少なくとも人工知能がコンピュータとして存在する限り百年先も千年先も芸術を生み出すことはできない。とれだけ演算速度が向上し情報処理の能力が向上してもそれは叶わない。もちろん、量子コンピュータであろうが、千年先のスーパー・コンピュータであろうが、それはできない。そうしたことにその理由があるわけではない。

情報をどんなに素早く巧妙に処

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変わってはいけない

変わってはいけない

私は 何年間も ノイローゼでした。
私は 心配し 落胆し 自分のことしか考えませんでした。
皆が 私に 変わるようにと 言い続けました。
皆が 私は ノイローゼだと 言い続けました。

そして 私は 皆を 恨みました。
彼らを もっともだと 思いました。
そして 変わりたいと 願いました。

でも 変わる事が 出来ませんでした。
どんなに 変わろうと 努力しても。

私を 何よりも 傷つけたのは 

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最果ての陽だまり

最果ての陽だまり

 こんな夢を見た、と碧依が言っていた。
 彼女の死体には綺麗な笑みが硬直し、貼りついていた。
 さっきまで私を讃えてくれていた表情だ。瞼が半分降ろされ、優しい眼差しをくれている。さっきよりも口角は下がっているが、笑みとしては保たれている。健康的な白い歯が覗いていた。彼女の瞳の中に私を探すが、虚空を映すばかりで、私の姿は判然としない。

 私の問題は全て解決したので、死のうと思います。

 そう言っ

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Cadd9 #11 「愛される夢」

Cadd9 #11 「愛される夢」

ナスノ家の縁側は日当たりも風通しもよく、とても居心地のよい場所だった。そこで昼寝をするたびに、樹はいつも、年寄りの膝の上で眠る年老いた猫のような気分になる。その猫は長生きをしすぎていて、一日中眠ってばかりいるのだ。

縁側の色褪せた板敷きの床に枕を置き、日の光を浴びながらうとうとしていると、樹はじつにさまざまな夢を見た。どれも永遠のように長く、そして光に溢れたまぶしい夢だった。しかしそれらは目が覚

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しーんとするとき

しーんとするとき

二年前の秋に、母方の祖母が亡くなった。体調を崩して入院し、その後肺炎が悪化して、帰らぬ人となった。祖母は小柄で静かな人だった。でも話し出すと面白い人だった。

入院中、祖母はよく病室をぼんやりと見回しながら「変なものが見える」と話していた。「変なものって、なにが見えるの?」とたずねると、「うまく言えない」と言う。

そして亡くなる少し前に、ベッドの上で何か手作業をしていたところ、祖母ははっと後ろを

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わたしよりもたくさんの

わたしよりもたくさんの

月に二度、精神科病院に行く。今年の夏で通い始めて十年になるけれど、病院にいると、世の中にはじつにいろいろな人がいるものだと深く考え込んでしまうことがある。

たとえば、いつも同じ時間に同じ場所で目を瞑ってぴょんぴょんと飛び跳ねているおじいさんがいる。きっとおじいさんにとってそれは一種の大切な儀式なんだろうな。一生に一度の願いをこめるみたいにぎゅっと目を閉じて、それはもう一心に飛び跳ねている。そのお

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