記事一覧

声を失って休職した話②

前回の記事への反響を受けて前回の記事を投稿して、何人かの知人からメッセージをもらった。 このような状態になって、自身のことを振り返るために、もっている言葉で自身…

ぺら
11か月前
4

コンビニ弁当が食べられない

私がコンビニ弁当を食べられない理由私は小さい頃からコンビニ弁当が食べられない。 もう少し言えば、スーパーのお惣菜コーナーに売れている、お弁当の形をしたものでさえ…

ぺら
11か月前
5

バウンダリー

1等しく窮屈そうに並んだロッカーは、扉を閉めるだけで周囲に振動が伝わるせいか、やけに閉口音が響いて聞こえた。いつもと同じくらいの力で閉めたと思っていたが、力が入…

ぺら
11か月前
5

声を失って休職した話

1.声を失う 一月下旬、コロナ患者対応をした後、自らがコロナ感染してしまった。療養期間を経て、二月頭に職場に復帰した数日後、突然、声が出なくなった。それも全く。…

ぺら
11か月前
29

優しい人の語りを聴くこと

言葉を発する前に数秒間、間が開く。 そして話し出す。 その内容はまるで 文章を読んでいるかのように感じる。 一直線ではない。( )がところどころ見える。 それがどう…

ぺら
11か月前
2

無音の話を聴く-発声障害になった話-

忙しなく口と手を動かしても、 伝えられることはほんのわずか。 声の出ない世界で生きること。 それは電話がかかってきても出ることは 出来ない世界になるということであ…

ぺら
1年前
1

ソクラテスのお守り

漆黒のような冷風とは異なり、どこか透けて見えるような春の日差しと風に包まれた。 湖の前に白い巨塔は立ちはだかる。 私はその奥へはいまだに進んだことがない。 いつも…

ぺら
2年前
6

このナツの考え事、というよりも上半期に私が感じたあれやこれや

こんにちは。 お久しぶりですね、ぺらです。 長袖を着ても少し寒かったころから一転、 「災害級の暑さ」とも表現される暑い季節に 知らない間に移り変わっていましたね、最…

ぺら
3年前
20

おにぎり性格診断

私は知っている。うだうだ言いながら、台所に立ってシャコシャコと硬い米粒を水の中で浮遊させ、それをその大きな手で押さえつけてはかき回し、白い入浴剤のような水を排水…

ぺら
4年前
4

☑『答えのない正解を生きる』小坂井敏晶

答えがあると思っていることへの危惧、小坂井敏晶さんご本人のご経験、私の身と心をひっくり返してくれた。揺さぶられて、まだまだ知らないことがあるのに、あたかも知り…

ぺら
4年前
2

自主学習テーマ:80年代という世代が残した文化とネオリベ主義

『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』宮沢章夫 文化の発展 ・表現における不合理さを擁護することで生まれる →不合理さへの擁護は資本主義社会における一種の愚…

ぺら
4年前
8

☑︎地域ではたらく「風の人」という新しい選択

私には何冊か、読むとお腹が痛くなる本がある。それはお話の中に入り込み過ぎて、怒りや悔しさが腹の底から煮えくりかえるかのような痛みと、衝撃や感動(いや、動揺に近い…

ぺら
4年前
2

☑︎かかわり方のまなび方/西村佳哲

 「これを読むべき!」 そう言われると、心の中で何故か読む気が失せてしまう。 「それはあんたの感性で良かったもんやろ?」と反発したくなってしまう。 そんな私がTwitt…

ぺら
4年前
4

いってらっしゃい

 自転車の鍵が見つからない。スマホの懐中電灯機能であたりを照らすが見当たらない。ある場所を照らしたらある場所が暗闇になる。確かこのポケットに入れたはずなのに。そ…

ぺら
4年前
2

☑︎手のひらの京/綿矢りさ

三人姉妹がそれぞれの未来に向かって、踏み出していく。京都を舞台に、流暢な京都弁で描かれる文体は読みやすく、思わず声に出して読みたくなった。 特に印象に残った話は…

ぺら
4年前

男女論とその他もろもろ

生きがい 太宰にとって、生きがいとは何だったのか 『人間失格』 映画館で映画を観ることが苦手な私が 初めて公開日に観に行った。 チケットを機械で買うのに手こずり…

ぺら
4年前
4
声を失って休職した話②

声を失って休職した話②

前回の記事への反響を受けて前回の記事を投稿して、何人かの知人からメッセージをもらった。

このような状態になって、自身のことを振り返るために、もっている言葉で自身の状態を表現してみて純粋に、良かったと思った。
二十代前半の頃に比べて、さまざまな経験、それに伴う思考の数や幅が広がったことによって、自分のことを自分で書くその言葉に信憑性を見出せなくなっていた。
その理由ははっきりしていて、言葉に出来て

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コンビニ弁当が食べられない

コンビニ弁当が食べられない

私がコンビニ弁当を食べられない理由私は小さい頃からコンビニ弁当が食べられない。
もう少し言えば、スーパーのお惣菜コーナーに売れている、お弁当の形をしたものでさえも手に取ることが出来ない。

そのことが当たり前になりすぎて、なんとも思ったことがなかったが、ある時に、強烈に思い出された光景がこのような現象を生み出しているのではないかと思うようになった。

それは幼少期、母親が風邪をひいたか何かで体調を

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バウンダリー

バウンダリー

1等しく窮屈そうに並んだロッカーは、扉を閉めるだけで周囲に振動が伝わるせいか、やけに閉口音が響いて聞こえた。いつもと同じくらいの力で閉めたと思っていたが、力が入り乱暴に扱ってしまっていたのかもしれないと思いながら、文は更衣室を出た。
裏口から出るとひんやりとした空気に全身が縮こまる。幾度となくこんな夜を過ごして来たが、今晩はどこか先の見えない暗闇のトンネルに引きずられそうになる。これまでにこんな夜

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声を失って休職した話

声を失って休職した話

1.声を失う

一月下旬、コロナ患者対応をした後、自らがコロナ感染してしまった。療養期間を経て、二月頭に職場に復帰した数日後、突然、声が出なくなった。それも全く。復帰後二日間くらいは掠れ声ながらも声を出してのコミュニケーションがとれていたのだが、完全に声を失ってからは筆談をメインとして、ジェスチャーや読唇術でコミュニケーションを取らざる得なくなった。その状態をみた上司から紹介された耳鼻科に受診し、

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優しい人の語りを聴くこと

優しい人の語りを聴くこと

言葉を発する前に数秒間、間が開く。
そして話し出す。
その内容はまるで
文章を読んでいるかのように感じる。
一直線ではない。( )がところどころ見える。

それがどうしてなのか。
まず、最初から結末を
考えていないからなのではないか。
だからこそ、時間が必要なのではないだろうか。
話をしながら同時に考えている。
視線が自然と上を向き、間がある。
私はその姿にその人の繊細な思考を垣間見る。

もう一

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無音の話を聴く-発声障害になった話-

無音の話を聴く-発声障害になった話-

忙しなく口と手を動かしても、
伝えられることはほんのわずか。

声の出ない世界で生きること。

それは電話がかかってきても出ることは
出来ない世界になるということである。

それは自動レジのあるスーパーに行き、
自動レジがないお店では
可能な限り買い物は
控える生活になるということである。

それは伝えたいことを
満足に伝えられることは殆ど皆無に等しくなり、
うまく伝わっていないだろうことも

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ソクラテスのお守り

ソクラテスのお守り

漆黒のような冷風とは異なり、どこか透けて見えるような春の日差しと風に包まれた。
湖の前に白い巨塔は立ちはだかる。
私はその奥へはいまだに進んだことがない。
いつもなら真っすぐ進む道を遠回りし、湖の円周を囲うように作られている歩道の一部に足を踏み入れた。
巨塔は影を作る。明確な陰陽の境界線を成し、私の目の前に現れる。それは余白を許さない、乾性の境界性のような気がした。

豊かな水量が光の反射によって

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このナツの考え事、というよりも上半期に私が感じたあれやこれや

このナツの考え事、というよりも上半期に私が感じたあれやこれや

こんにちは。
お久しぶりですね、ぺらです。
長袖を着ても少し寒かったころから一転、
「災害級の暑さ」とも表現される暑い季節に
知らない間に移り変わっていましたね、最近。

頭、痛くないですか?
水分補給はしてますか?
ご飯はバランスよく食べられていますか?
お元気でね、どうか。

何を今日は書くか。
最近の考え事を言葉にします。
この上半期は何というか、
様々なことが「露呈」した期間だったなと

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おにぎり性格診断

おにぎり性格診断

私は知っている。うだうだ言いながら、台所に立ってシャコシャコと硬い米粒を水の中で浮遊させ、それをその大きな手で押さえつけてはかき回し、白い入浴剤のような水を排水溝に捨てる。その一連の動作の中に、無駄はない。音が私を現実から引き離して、想像の世界に米粒と一緒に浸らせる。そうこうしているうちに、炊飯器の中にその米粒とひたひたの水分が放り込まれ、スイッチが押された。

私は知っている。親はどっちも働いて

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☑『答えのない正解を生きる』小坂井敏晶

☑『答えのない正解を生きる』小坂井敏晶



答えがあると思っていることへの危惧、小坂井敏晶さんご本人のご経験、私の身と心をひっくり返してくれた。揺さぶられて、まだまだ知らないことがあるのに、あたかも知り尽くしたかのように誰かに知識や考えをひけらかす自分に腹が立つ。

しかし、知らないことがあるということは、その分、まだ世界は広いということを同時に知らしめてくれていることにもなる。

問いへの問いを立て、考え、悩み、それでも自分の言語を持

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自主学習テーマ:80年代という世代が残した文化とネオリベ主義

自主学習テーマ:80年代という世代が残した文化とネオリベ主義

『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』宮沢章夫

文化の発展
・表現における不合理さを擁護することで生まれる
→不合理さへの擁護は資本主義社会における一種の愚かな行為
→文化の発展には経済が好況であることが必要?
*どうして最近のテレビ番組は面白くないのか?
笑いを合理的に行おうとするからなのではないか
→ごっつええ感じやとんねるずのコント番組は莫大な資材が必要であった
→視聴率や収入の割

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☑︎地域ではたらく「風の人」という新しい選択

私には何冊か、読むとお腹が痛くなる本がある。それはお話の中に入り込み過ぎて、怒りや悔しさが腹の底から煮えくりかえるかのような痛みと、衝撃や感動(いや、動揺に近いかもしれない)で手先が震え出す痛みの二種類がある。

何気なく図書館で手に取ったこの本は、そのどちらでもない焦りと安堵の入り混じったなんとも言えない気持ち悪さを残してくれたような。

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あまりFacebookで本の話題を出すこ

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☑︎かかわり方のまなび方/西村佳哲

 「これを読むべき!」
そう言われると、心の中で何故か読む気が失せてしまう。
「それはあんたの感性で良かったもんやろ?」と反発したくなってしまう。
そんな私がTwitterで見かけて、すぐにBook Offのアプリケーションを
ダウンロードし、注文していた。(これ含めて三冊の古本を同時に注文したのだけれど、この新本一冊の値段と同じくらいで三冊買えた。)

古本だったので、ページのところどころに、も

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いってらっしゃい

 自転車の鍵が見つからない。スマホの懐中電灯機能であたりを照らすが見当たらない。ある場所を照らしたらある場所が暗闇になる。確かこのポケットに入れたはずなのに。そう思って何度かコートのポケットを探るが、それらしいものすら見つからない。かかとの痛みが次第に自覚されるようになってきて、より一層、虚しさが意識されてつらい。通りを渡れば、駅が人工的に輝き、こちらを照らしている。もういっそのこと、電車で帰ろう

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☑︎手のひらの京/綿矢りさ

三人姉妹がそれぞれの未来に向かって、踏み出していく。京都を舞台に、流暢な京都弁で描かれる文体は読みやすく、思わず声に出して読みたくなった。
特に印象に残った話は、三女の上京までの過程を描いた場面だ。私自身、山陰を出たことがなく、ましてや東京など考えたことがなかったが、今、上京してみたいという思いが強い。一年だけ。地域や地元というある意味で守られている内にいることが時に窮屈に感じることがある。私の知

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男女論とその他もろもろ

生きがい

太宰にとって、生きがいとは何だったのか

『人間失格』

映画館で映画を観ることが苦手な私が

初めて公開日に観に行った。

チケットを機械で買うのに手こずり、

数秒間、機械の前でじーっと考え、購入した。

通路を通り、あ、席ミスった、と思いながら、

本編開始を待った。

そういえば、映画館で映画を観たのは
いつぶりだろう。

そう思い返すに、「ナラタージュ」以来。

あの映画を鳥

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